映画『幸せなひとりぼっち』レビュー

“泣けるイイ話”の万国普遍な安さ

「ベタなお涙頂戴映画の話法というのは万国共通なのだなァ」と。

主人公はオーヴェという老人だ。
町内のゴミ出し、駐輪、防犯、車両の進入に目を光らせるのが日課で、違反者を見るや厳しく叱責する。誰にも頼まれていないのに。日本にもこういう面倒くさいオジサンは、いる。往々にしてこういうオジサンは大抵、独り身が長い。オーヴェもそうだ。最愛の妻に先立たれて久しい。毎日、墓参りをしては近隣住民の事を愚痴っている。そんな彼の中で、ある想いが固まりつつあった。

妻の後を追う。
身辺整理は大方ついた。あとはいつ決行するかだ。オーヴェのキャラター描写を積み重ね、ついには最初の自殺未遂に到るまでのテンポは快調で小気味いい。こういうオジサンとは関わり合いになりたくないが、傍から見ている分には面白いもんである。

自殺を試みたオーヴェの脳裏にはこれまでの人生が走馬灯のように甦っていく。幼くして訪れた母との死別、父の事故死、そして妻との出会い…おいおい、ドラマツルギーについてとやかく言う気はないが、回想シーンは決して物語を前に進めたりはしない。にも関わらず、作り手は死にきれないオーヴェに何度も自殺を試みさせては回想シーンを盛り込んでいくのである。その度に映画は愁嘆場となり、観客は泣くことを強要される。いいや、僕らが見たいのはこれだけ哀しい人生を歩んできたオーヴェがいかにして周囲の人々と調和し、新しい人生を歩んでいくかだ。これでは回想シーンのために結末が作られているようなもんである。いっそのこと、回想シーンを1つも使わずに過去を匂わせるという(高度な)演出方法もあったハズだ。ドラマのために不必要に哀しいエピソードが盛り込まれているように感じられた。

むしろ主眼は生家を奪い、妻を助けなかった行政システムへの怒りではないかと感じたのだが、原作はどうなっているのだろう。

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幸せなひとりぼっちのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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