映画『モアナと伝説の海』レビュー

ディズニーアニメと神話のハイブリッド

 島の族長の娘として大切に育てられたモアナが、世界に広がる死の闇を止めるべく大海原に旅に出る。「シュガー・ラッシュ」、「アナ雪」、「ベイマックス」、「ズートピア」と、良作アニメーションを相次いで送り出しヒット作のノウハウを知り尽くしたディズニーのこと。少女の航海は人生における困難の比喩であり、壮大な冒険を通じて成長を描く作品なのだと観る前から容易に想像がつく。

 という訳でいつも通り笑って泣けるハイクオリティ・アニメーションなのだが、興味深い取り組みも見受けられた。それは神話との融合だ。そもそも本作はポリネシア神話が下敷きになっているそうだが、個人的にはギリシャ神話にも通じる部分があるように感じた。生命を生み出した全能の神テフィティはまさしくガイアだし、マウイが空を持ち上げたのはアトラス、火を人間に与えたのはプロメテウスのエピソードを連想させる。終盤に立ちはだかる巨大な敵なんて、「タイタンの逆襲」に出てくるクロノスじゃないの。ついでに言えばモーセの有名な神業まで繰り出して、旧約聖書からも引用する贅沢ぶり。

 神話を連想させる印象的なエピソードを盛り込むことで作品の世界観はグッと深まり、単なる少女の成長物語から先祖代々時間を超えて受け継がれてきた壮大な叙事詩へと昇華することに成功している。

 最後に少し余談を。劇中ではマウイと大きな蟹が対決する場面があり、二人の間には因縁があることも明かされる。ギリシャ神話の英雄ヘラクレスと言えば12の難業で有名で、その一つにウミヘビの退治がある。その際ヘラクレスに蟹が飛び掛かるが、返り討ちにされて敗死。神の慈悲によって天に上げられ、かに座の由来となったのだ。さて、マウイ役のドウェイン・ジョンソンは2014年公開の「ヘラクレス」でタイトルロールを演じている。まさか・・ね?

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モアナと伝説の海のポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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