映画『レゴバットマン ザ・ムービー』レビュー

バディ・ジョーカー

 近年、やたらと深刻化、哲学的なテーマにまで踏み込み、ティム・バートンがメガホンをとっていた時期のおかしみのようなものが消え去りつつあった『バットマン』シリーズ。そんな中、超変化球とはいえ、バットマンにまつわる光と影を、遊び心やサービス精神満載で解剖する快作、遂に登場。

 ゴッサム・シティを危機から何度となく救ってきた英雄の、ベールに包まれたミステリアスなシングルライフ。その実態は、だだっ広い豪邸で、レンジで温めたディナーを黙々と食し、ホームシアターでお気に入りの映画(まさかの、あの作品!)に独り浸る。大切な家族を失ったトラウマゆえか、幸せになることから背を向けているような彼の癒し難い孤独が、2.5頭身の小っちゃなフィギュアから、シニカルなユーモアをたたえつつ、しみじみと伝わってくる。

 宿敵ジョーカーとの、ややこしい関係性。バットマンに対する異様なまでの執着に、自分を対等な存在として認め、憎しみを公言することで報いるべきというジョーカーの切なる願いは、一向に振り向いてくれない片想いの相手への恋情のようなもの。笑顔がチャームポイント(?)のジョーカーの目に浮かぶ、熱い涙。レゴならではの平板な顔・シンプルな目(鼻)立ちにも関わらず、何とも表情豊かに映るのは、作り手たちの、各キャラクターや『バットマン』の世界観への並々ならぬ思い入れが、全篇から溢れ出ているからだろう。

 独特のしゃがれ声に、バットマン(ブルース・ウェイン)の面倒くさい性格を繊細な表現で注ぎ込むウィル・アーネット、『ハングオーバー!』シリーズなどでの怪演そのままに、破壊的だが憎めないジョーカーに息を吹き込むザック・ガリフィアナキスをはじめ、もうひとりの天敵役にチャニング・テイタム、マライア・キャリーまで参加するなど、声優陣も充実。実写ともアニメーションとも違う、素朴な温かさも魅力の好篇である。

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レゴバットマン ザ・ムービーのポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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