映画『ラ・ラ・ランド』レビュー

人生に「たら/れば」は無い。

名画にあやかる色彩設計、ロマンと躍動感あふれる音楽、それらが提示するのは「人生の普遍」だ。

店に着く前にクルマはフリーウェイを「降りる=off」。この暗喩が絶妙だ。ステージと客席の間で描き合うもう一つの時間。全ては完璧で、充実と幸せに満ちている。しかし2回めの「off」がやって来る。道は一本しかなくて、どちらかを選ぶしか無く、選ぶと言っても自分の意志と外からの力と、その絡み合いで自分が流れてゆく、その流れが道になる。

相手と共に生きたからこそ、そして別れたからこそ、確かな道を歩む今の自分がいる。失敗も不実も、傷つき傷つけられたことさえも、今の自分を作っている。

今の自分につい置き換えてしまう。パートナーを喪ってから今まで、それでも取り組むべきことを見つけ、ときには倦怠と戦いながら、一人の身を整えつつ歩んでいる。パートナーを喪う前の自分と比べ、格段に成長しているとは思う。そんな自分とパートナーが「いま、共に」生きていれば…そんな想像が、セブとミアが描く「もう一つの時間」なのだ。

そんな時間は作れはしない。そんな魔法があるなら、最初からパートナーを死なせはしない。この先誰と出会おうが共に暮らそうが、この想いが捨て去られることは無く、そんな捨て去れぬ思いはこの先出会う誰もがきっと背負っている。蹉跌を乗り越えて学んで鍛え、想いを背負いつつ現実に向き合って歩む。それしか出来ないのが「人」なのだ。

「たら/れば」を唱えて今の自分の不調を過去や他人のせいにすること、背後にある苦難を想像もせずに成功者を妬むことなどに、意味はない。ロマンチックな物語は一方で、厳しく尊い生き方を提示している。

ステージからミアを見送るセブの微笑みと頷きが、パートナーの姿にカブる。珠玉の音楽と物語の末に、この巡り合わせを与えてくれた作り手たちに敬服と感謝のほかない。

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ラ・ラ・ランドのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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