映画『ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊』レビュー

その正義の狭間に

シリア政府による反体制派への弾圧が熾烈を極める中、欧米側の需要として生まれたともいわれる民間防衛隊ホワイトヘルメット。しかしその現場に目を凝らすと、為政者たちの思惑を超えたものが見えてきた。

戦争。手前勝手で利己的な、正義と正義の押し付け合い。
いつ、どこの、誰による戦争でもそれは同じ。

大林宣彦が諭した「正義より正気」。
正義と正義がぶつかり合えば、その狭間が修羅場となる。
その狭間にあってなお「正気」であり続けること。
それは、世の中の真理を履き違えた為政者たちに気触(かぶ)れることなく、目の前の生活を保つこと。

生活を保つこと。
それは、夜眠る家があること。
食事をとること。
家族や友人の安否を知っていること。
誇れる仕事があること。
仲間と肩を組むこと。
時間は止まることがなく、
子供たちが、かならず明日が来ると知っていること。
明日のその先に、将来の夢を描けること。

反体制派の武装グループだったメンバーは、人々の生活を保つことを優先し「奪うこと」から「救うこと」に転身した。

『この世界の片隅に』の北条すずが頑なに守った生活も、やはり常軌を逸した正義に挟まれて、なお「正気」であり続けるためではなかったか。

生後まもなく生き埋めになった赤ん坊が、空爆によるガレキの亀裂から「もういちど産まれ直した」ことの意味、その啓示。
『トゥモロー・ワールド』の赤ん坊を思い出した。
戦下に生まれた命に、憑き物の取れた兵士たちが思わずヘルメットを脱いだ、あの瞬間に宿っていた「正気」を。

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ホワイト・ヘルメット シリア民間防衛隊のポスター
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田中 啓一のプロフィール画像

田中 啓一Freak

基本的にはレビューやめました。
雑感中心に書き込みます。ときどきガッツリ取り組みたくなるかもしれませんが、そんなときは、あーこいつコーフンしてんだなーくらいにご笑納ください。

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