映画『沈黙 サイレンス』レビュー

果てしない苦悩の先に・・・。

 マーティン・スコセッシ監督にとって長年の悲願であった遠藤周作による小説「沈黙」の映画化。タイトルが意味するのは神の沈黙だ。人々は神に祈りを捧げ助けを求めているのに、神はなぜ沈黙を保ったままなのか。人類にとって永遠のテーマに挑んだ力作である。

 棄教したという噂が流れたフェレイラ神父の後を追って、極東の島国へとやってきたロドリゴ。キリスト教が邪教とされる日本において教えを説いて回る彼の姿は、ユダヤ教の世界で新たな神の教えを伝えたイエス・キリストに幾度となく重なる。長髪に髭を蓄えたアンドリュー・ガーフィールドの精悍な顔つきが、段々とキリストを連想させるのも演出の一環だろう。水面に写った彼の顔がキリストに見えるシーンで、その思いは確信に変わった。

 ところが、迫害に立ち向かい命を捧げることによって永遠のアイコンとなったイエスとは違い、ロドリゴはそう簡単には綺麗な殉教者にさせてくれない。囚われの身となった彼の前で次々と殺害されるキリシタンたち。お前たちの持ち込んだキリスト教のせいで罪無き人々が死んでいく。彼らを救いたければ棄教せよ。どんな祈りも目の前の人間すら救うことが出来ないという事実を突きつけられたロドリゴは、かつてない絶望の底へと突き落とされる。

 もし自分が彼の立場にあったらと考えると、その問いかけのあまりの重さにしばし言葉を失ってしまう。観る者が沈黙に打ちひしがれる時、果たして神は答えてくれるのか。2時間40分、究極の恐怖と苦悩を生き延びた観客だけが辿り着ける信仰の頂で、全ての答えは待っている。

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沈黙 サイレンスのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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