映画『ガール・オン・ザ・トレイン』レビュー

レイチェルの離婚

 エミリー・ブラントは、いかなる役柄であれ、そつなくこなす実力派ではあるが、近作『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)、『ボーダーライン』(15)などのように、男勝りのタフさの裏に、か弱い脆さを秘めた役柄を演じると、とりわけ異彩を放つ、稀有な女優である。

 驚異の新星によるベストセラー小説の映画化である本作のレイチェルも、のっけから目はうつろ、列車の窓外に広がる人間模様に、身勝手な妄想を膨らませるのを日課とする、アルコールが手放せないバツイチ女である一方、暴走気味の正義感を、警察や初対面の相手の前で炸裂させ、突如アクティブに変貌したりもする。そんな彼女が、なぜ決まって同じ路線の列車に乗り、酒に依存せざるを得なくなったのか……。痛ましい過去が明らかにされるうちに、傍迷惑なアル中が、愛おしい輝きを見せる瞬間がある。

 これぞ”ゲスの極み”野郎がうそぶく、「女は、欲が深い」との迷言に、あんたにだけは言われたないわい……と憤りつつ、妙な説得力を感じたりもする。超シニカルなブラックコメディにも見える『ゴーン・ガール』(14)のお騒がせヒロインの系譜に連なる、いい歳して未だ乙女心を引きずり、空虚さや孤独を抱えたまま、ないものねだりを続ける、レイチェルら3人の”ガール”たち。出逢い方やタイミングさえ異なれば、友人になれたかもしれない三者三様の人生が、生死を隔てて、最悪の形で交錯してしまうのが、何とも悲しい。

 ネタばれ厳禁のクライマックスについては、色々と言いたいこともあるが、絶体絶命に陥ったレイチェル決死の落とし前のつけ方は、呑んだくれの面目躍如(?)といえるだろう。酒好きには馴染みの深いアレに、あんな使い道があったとは……。戦慄を覚えると同時に、ついニンマリ。

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ガール・オン・ザ・トレインのポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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