映画『何者』レビュー

ひとでなしの恋

 夏の暑さの反動か、ただの偶然なのかは分からないが、『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』、『永い言い訳』、『誰のせいでもない』、TVドラマ「夏目漱石の妻」など邦洋問わず、作家を題材に、すこぶる魅惑的な作品が続く。小説家なる人種=”ひとでなし”にして”ひとたらし”で、その壮絶なクズっぷりさえも、才能や魅力と不可分であることが、赤裸々に映し出される。

 現代の就活生による、表向き良好な、その実、仁義なきサバイバルゲームを描く『何者』は、卒業を控えた5人の大学生+αが織りなす群像劇。その中心を担うのが、大学生活のすべてを捧げてきた演劇サークルで、脚本を手掛けていた拓人(佐藤健)。現在は、かつての同志と袂を分かち、就職活動にシフトしているが、物書きとしての血が騒ぐのか、就活仲間と和気あいあいと過ごす素振りの裏では、悪意が透ける観察眼を通した人物評を、ネット上にぶちまけている。彼には意中の女性がいるが、彼女は彼のルームメイトに一途な恋心を抱き続ける。想い人には甘くなるのか、拓人お得意のクールさを装う罵詈雑言も彼女には向けられず、人物像としても曖昧なマドンナ的役柄を、有村架純が絶妙なバランスで演じる。

 朝井リョウの直木賞受賞作に挑んだのは、演劇界の鬼才・三浦大輔。原作を淡々と踏襲するかに見せ、一気に自らのフィールドへと引きずり込むクライマックスは、正に圧巻。観察していたつもりが、逆に見透かされていて、見下していたはずの相手に、実は見下ろされていたことを知り愕然とする拓人に、三浦監督は、告白もせぬまま大失恋を喫する屈辱まで味わせてしまう。その鮮やかな手法からは、演劇に対する限りない誇りと愛情とともに、生き恥をさらけ出してこそ人間であるという三浦独特の人生観も覗き、”ひとでなし”の殻に閉じこもる青年に送られる、超サディスティックなエールに、熱いものさえ込み上げた次第である。

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何者のポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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