映画『君の名は。』レビュー

十数年経ったら、もう一度観る。

思いや感覚や記憶を風化させるのは、時間と距離。ほんのひと月くらい合わなくなっただけで、顔や姿はともかく、香りや言葉までもおぼろげになってしまうことさえある。

部屋の障子が、電車の扉が、しつこいほどに、開いて、閉まってを繰り返す。向こうとこちらが隔てられ、つながり、を繰り返す。映画のリズムと物語のテーマを、引き戸の動きが象徴する。

まだ会ったこともない二人が、人ならざる「流れ」の下に「会おう」と決意する。けれどその「流れ」は意のままにならず、「会おう」と言う意志が「流れ」を変える。

ファンタジーと評するのは簡単だ。辻褄が合わないことを指摘する向きもあろう。けれど見よ、描かれる空の美しさを。誰もがきっと、今まで生きている内に一瞬は見上げたであろう、原風景たる美しい空。その空は「会いにいこう」という強く純粋な意志を受け止め反射するからこそ、美しいのだ。「会いたい」という気持ちが、それを取り囲む世界を輝かせる。その気持ちを押しつぶす災厄さえも美しく。

パートナーを失って一年半以上経った。遅い夏休みをとって地元に帰り、学生の頃からつかず離れず続いている友人と、今作を観た。会う前に見上げた地元の空はそれなりに美しかった。その友人も同じだけの年を経て相応に変わり、それでもありのままに魅力的だった。薄れる記憶の中だからこそ際立つ「美しさ」。ある程度人生を経てきた人間にこそ効く「切なさ」。そんな人間を改めて未来に向けて駆け出させる「衝動」。若い人たちが観て感じ入るのとはまた別の感覚を、この映画は大人にも励起する。

本当に「刺さる」映画だった。
頭脳ではなく、身体感覚で解いていく問い。
この人生は何のために、何と出会うためにあるのか。
それをおれの前に提示してくれた。
天啓であり、出会いだった。
十数年経ったら、この映画をもう一度観てみよう。
その問いは解けているだろうか。

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君の名は。のポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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