映画『クリムゾン・ピーク』レビュー

主役はクリムゾン・ピーク

鬼才ギレルモ・デルトロが再びホラー映画に挑んだが、今回はこれまでと少し趣が違う。フランコ政権下のスペインを舞台にした前2作「デビルズ・バックボーン」や「パンズ・ラビリンス」のような土着の情念と粘着性がなく、ミア・ワシコウスカ、トム・ヒドルストン、ジェシカ・チャステインら人気俳優を迎えたスター映画として怖さを半ば放棄すらしている。
デルトロの目的はただ1つ、“タイトルロール”となる主役、洋館クリムゾン・ピークを再現する事だ。

アメリカの豪商の下に生まれた小説家のイーディスは父の事故死をきっかけに英国の実業家トーマスと結婚。彼の領地で通称“クリムゾン・ピーク”と呼ばれる洋館に住む事となる。準男爵の称号を持つとはいえ、没落貴族であるトーマス。新妻としては御免こうむりたいボロ屋敷で面食らってしまう。廊下を歩けば床からは土地由来の赤粘土が血のように染み出し、壁はいたる所が煤けて不気味な影を成している。風が吹き抜ける音は心なしか人のうめき声のようにも聞こえ、エントランスはなんと天井が抜けて雪が舞っているではないか。絶対に住みたくはないが、人を魅了してやまない禍々しさ。この一軒家を丸ごと創り上げてしまったデルトロの美への妄執こそが本作の主役であろう。

人気スター達はクリムゾン・ピークを引き立てるための飾りのようなものだ。金髪のウェーブを下し、白のネグリジェ姿でおののくミア・ワシコウスカがクリムゾン・ピークの夜には良く映える。地毛のブロンドよりも黒髪の方が似合うトムヒ、そしてヴィクトリア朝の美人と骨格がまんま同じなチャステインの恐美人っぷり。これらが寸分違わぬ本作の“美術設計”だ。

それにしても処女のヒロイン、妖しい美男子と怖ろしい姉、人里離れた洋館…これって山岸涼子のマンガそのままじゃん!デルトロの事だから案外、元ネタこっちかも!

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クリムゾン・ピークのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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