映画『人生はビギナーズ』レビュー

半分100点、半分0点。

マイク・ミルズ監督は、本業がアートディレクターというだけあって雰囲気づくりがうまい。彼独特の、淡泊でオシャレな空気感を心地よいと感じる人も多かろう。

ただ、オシャレ以上のものを期待すると、どうしても人間ドラマの掘り下げの甘さ、浅さが気になってしまうのはデビュー作の『サムサッカー』の頃から変わらない。

とはいえ老年期に達して初めてゲイをカミングアウトする父親のパートは文句なしに魅力的で、ミルズと実父の実体験を基にしているからか、非常に説得力がある。オスカーに輝いたクリストファー・プラマーの演技も、当然ながら素晴らしい。

じゃあなにがダメかって、映画のもう半分を占めている、主人公の恋愛パートの絵空事っぷり。まずオシャレ業界で活躍しているけれど、プライベートでは恋にも人づきあいにも臆病ですという主人公の人物設定が、とてもアラフォーとは思えない気恥ずかしさ。劇中でも完全に「奥手の童貞」みたいな描かれ方をしていて、ソレっていい年こいたオトナとしてダメでしょ、と叱ってやりたくなる。

それなのに、だ。ウジウジフワフワしてるだけでなぜかフランスから来た妖精みたいな美人女優(演じるメラニー・ロランがべらぼうに可愛いです)と付き合えてしまうって、どんだけファンタジーなんですか!? 同じ男としても共感度はゼロ。父親パートが感動的なだけに、ママゴトみたいな恋愛パートのお粗末さが際立ってしまうのだ。

センスはあるけど、語り手としては役不足。「大人になれない大人」というモチーフも、自分を甘やかした言い訳のようにしか思えない。まあ、プラマー御大の名演やメラニー・ロランのキュートさを引き出したというだけで十分賞賛に値するような気もするけれど、やっぱりぬるま湯みたいな映画ですよ、コレは。ここは敢えて悪意を持って、ミルズを「男版ソフィア・コッポラ」に認定したい。

5
人生はビギナーズのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2
村山 章のプロフィール画像

村山 章Freak

サエない映画ライターです。だって、応援する映画がこぞって売れないんだもの。

映画『人生はビギナーズ』に対する村山 章さんのレビューにコメントする

こんな作品もレビューされてます

新聞記者のポスター

【この国の民主主義は形だけでいいんだ】

 おもしろい! どれくらいおもしろかったか? 横のおじ...

パティ・ケイク$のポスター

ニュージャージーのラッパー NR

 ニュージャージー版、 サイタマのラッパー? ニュージ...