映画『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』レビュー

アイアンシェフ

今日におけるマーヴェル・シネマティック・ユニバースの成功はジョン・ファヴローなくしてあり得なかったのではないだろうか。ろくろく台本もない現場で当時“ユージュアル・サスペクツ”扱いだったダウ兄(註ロバート・ダウニーJr.)に主役を任せ、彼のメソッド演技でビッグバジェットを乗り切ったのは驚くべき事で、ダウ兄を信頼したファヴローの役者至上主義があってこそ、その後のMCUが“座長”ダウ兄の磁力に引き付けられたオールスター映画として機能してきたのではないだろうか。

人気レストランのシェフとしてキャリアを築いてきた主人公ファヴローが批評家の“ハートがない”という酷評にカッとなって「オレのオリジナルを食べてみろ」とツイートしてしまう。ところがダスティン・ホフマン演じるオーナーから“ここは私の店であって、オマエのオリジナルを食わせる店ではない”とクビにされてしまう。これは「アベンジャーズ」の伏線としか機能しない「アイアンマン2」を撮らされ、ついには「カウボーイ&エイリアン」だなんて大失敗作を撮らされてしまったファヴローの境遇そのものでもある。

かくしてファヴローは本当に作りたいものを求めて旅に出る。購入したフードトラックで全米を行脚、各地のご当地料理を応用したハンバーガーを作っていくのだ。有り物を使っていかに傑作を撮るかこそインデペンデント作家の至上命題。元妻がソフィア・ベルガラで今カノがスカジョとかコノヤローという感じのキャスティングで、最近は半ドン仕事の多かったジョン・レグイザモも実にイキが良く、アンサンブルが魅力だ。

ファヴローが我が子に伝える教えは“周りのみんなが喜んでくれたら嬉しいだろ?”という根源的な衝動についてだ。ファブローがメジャーで成功を収めた理由はこの最大公約数の多さであり、これからも2つの領域を横断しながら良質の映画を撮り続けてくれる事だろう。

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シェフ 三ツ星フードトラック始めましたのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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