映画『アバウト・タイム 愛おしい時間について』レビュー

時間よ、戻れ!

主人公ティムは21歳の誕生日に父(相変わらず素晴らしいビル・ナイ)に告げられる。「ウチの家系の男子には代々、特殊な能力があってな…それは自分だけ過去にタイムトラベルできるのだ!”。ティムがクローゼットにこもり、両手を握って戻りたい時間を念じるとあら不思議、昨夜のパーティ会場ではないか。

オーケー、観客の皆さん。デートの2人ならチケット売り場で何を観るのか迷っていた時間に戻れ。シングルのあなたは飲みにでも行くべきだ。ドーナル・グリーソンとレイチェル・マクアダムスは売れっ子のスケジュールを本作に費やす必要はない。そしてリチャード・カーティス監督よ、本作完成後に発表した引退声明を前作のうちにやってこの映画を撮るのをやめてくれ!

ティムがマーゴット・ロビーと付き合いたいばかりに(そりゃムリもない)告白のタイミングを確認するべく何度もタイムトラベルをするのは笑えるが、本命レイチェル・マクアダムスに執心する理由は彼女がレイチェル・マクアダムスである事以外にこの映画で理由はない。カーティスは面白いつもりらしいブラインドデート(なぜか真っ暗のレストランで食事)でロマンチックの欠片もない演出をし、さらには二人の共通の話題がケイト・モスという近年稀に見るダサいセリフで運命の恋を描こうとする(そもそもティムはケイト・モスに興味すらない)。このディテールのセンスの悪さは随所からも感じられ、老人特有の“ダサさ”としか言いようがない。

ティムはメアリー(マクアダムス)に顔をしかめられる度に過去に戻り、人生から失敗を排除していく(弁護士としての不敗伝説も“やり直して”いた事が暗示される)。登場人物が成長するために愚かなのは構わないが、愚鈍では感情移入できない。この映画は好感度の高い主演2人によってかろうじて成立しているだけであり、作り手の旧びた愚鈍さが何とも苛立たしい限りである。ああ、時間よ戻れ!

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アバウト・タイム 愛おしい時間についてのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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