映画『ファインディング・ドリー』レビュー

海の中にヘイトの潮流はない

ついにディズニー×ピクサーはネクストステージに到達した感がある。ディズニーがジョン・ラセターを経営トップに迎えて早数年。意欲的な試みはあれど互いにスポイルされてしまったかのような印象の作品が続いてきたが、今年は春公開の「ズートピア」とわずか半年間で2本も興行面、批評面で大成功を収めた。そのどちらにも共通するのが十数名規模のストーリーチームの存在である。練りに練った企画開発は小手先だけのプロットに終始せず、正しく時勢を読み取る同時代性がある。テーマはヘイトであり、レイシズムについてだ。

本作の主人公は前作でニモを助けたナンヨウハギのドリーだ。エレン・デジェネレスが愉快に演じるこのキャラクターは記憶が保てないコミックリリーフとして人気を集めてきたが、本作ではそれが早々に“病気”として描かれる。若年性健忘、ADHD…障害を抱えたドリーの将来を悲観して人知れず母親が涙をこぼす。ひょんな事からはぐれてしまったドリーはここまでたった一人で生きてきたのである。

ドキッとさせられる切り口だ。奇しくもアメリカではドナルド・トランプによるヘイトの嵐が吹き荒び、日本では“障害者を抹殺する”という狂人によって大量殺人が引き起こされた。海の仲間達もトラブルメーカーの彼女を時に疎ましく思ってしまう。他人との違いをどう受け入れるのか?ハンデを背負った人を社会はどう受け入れていくのか?いや、そもそも障害がハンデなのか。違う事とは障害なのか?人は違って当然である。無邪気なニモは問いかける“ドリーならどうする?”

人間は“相手の立場に立って思いやる”という人間でしか成し得ない行為を忘れてしまったのだろうか?海の中にはヘイトの潮流なんてない。ドリーの思い、行動が多くの魚たちを動かしていく様は感動的であり、何より痛快だ。

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ファインディング・ドリーのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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