映画『裸足の季節』レビュー

野生馬、怒りの道を駆ける

2015年は世界的にウーマンリヴ映画が同時発生した年として記憶されることになるかも知れない。カンヌ映画祭で好評を博し“トルコ版「ヴァージン・スーサイズ」”と評された本作はその実、名画座で上映するなら「マッドマックス/怒りのデス・ロード」とカップリングしたくなること請け合いのパワフルな反骨心に満ちた映画だ。ジョージ・ミラー御大と新鋭女流監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェンの予想外の邂逅を目撃する事は映画史の小さなうねりに目を凝らし続ける事の楽しみである。

舞台はトルコ。10数年前に両親を亡くし、独身の叔父と祖母の暮らす家に引き取られた五人姉妹は同級生の男子と遊んでいた所を目撃したご近所さんから“ふしだら”と告げ口されてしまう。年頃の娘が男の子と遊ぶのはもっての外。ましてや生娘のまま、親同士の取り決めで嫁に送り出すのが習わしだ。激昂した叔父は家の周囲を鉄柵で囲み、彼女らに花嫁修業を強いていく。

自分の人生を歩むことを許されず、自由を奪われてしまう…こんな人権侵害も甚だしい事が未だまかり通っているのかと唖然とさせられる。初めこそ反抗し、家を抜け出してトラックに飛び乗った彼女らの姿はソフィア・コッポラよろしく眩いばかりで“ガーリー映画”の文脈で語られてもおかしくないくらいだがやがて一人、また一人と嫁がされていく事によって映画はまるでニューシネマのような反抗と闘争の色を帯びていく。まだ小学校5~6年生くらいにしか見えない末妹ラーレは最後の一人になっても反逆を繰り返す。自由への鍵はそう“車”ではないか!自由を勝ち取るための力“運転”を授けてくれるのがイスラム世界では排斥されてしまうゲイの青年というのも重要だ。

自由を求める反抗の闘いは年齢も性別も超越し、観る者は奮い立たされる。原題は“Mustang”=野生馬。彼女らは籠の中の乙女なんかじゃない。自由を求めるじゃじゃ馬なのだ。

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裸足の季節のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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