映画『10 クローバーフィールド・レーン』レビュー

“クローバーフィールド”が指すもの

どっひゃ~!
とんだ珍品、怪作である。2016年早々、突如発表された「クローバーフィールド」姉妹作公開のアナウンス。一体、いつの間に作ってたんだ?無名の新人監督ダン・トラクテンバーグによるキャスト3名の別タイトルホラーだったがそれだと明かされ、続くハッタリ十分の予告編に今回も仕掛屋JJの博打が成功した。ネタバレはおろか、本編映像すら流出しかねない昨今、観客を映画館へと向かわせる見事な情報統制であり、その予想外の見事な出来栄え自体が最大のサプライズであろう。

映画はメアリー・エリザベス・ウィンステッド扮するミシェルが恋人との別離を決意し、一人立ち去るところから始まる。泣きはらしながら車をひた走らせるミシェル。突如として車が横転。気が付くと窓のない部屋で足に鎖を巻かれた状態で監禁されており、そこにはジョン・グッドマン扮する謎の大男がいて…。

映画はグッドマン演じるハワードとこの地下シェルターに居合わせたエメットの3人のみで進行するのだが、トラクテンバーグ監督は新人離れした緊迫感あふれる演出手腕を発揮している。特筆すべきは善人なのか悪人なのか、狂人なのか正気なのかわからないグレーゾーンを怪演するジョン・グッドマンで、この巨漢俳優は善人を演じる時の温かみも味わい深いが、やはり出世作となった「バートン・フィンク」のように巨躯を活かした狂気こそ唯一無二の個性だと思わされた。

正統派スリラーとして映画を牽引してからのラスト10分は一見“トンデモ”と映るが、これはメソメソしていたヒロインが自らのアイデンティティを確立し、立ち向かっていく力を身に着けるまでの“女性映画”とも見て取れる。「クローバーフィールド」は単にモンスター映画ではなく、“怪物”をメタファーとしたコンセプトシリーズの名称なのである。これも一連のネオウーマンリヴ映画の1本として数えておきたい。

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10 クローバーフィールド・レーンのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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