映画『エクス・マキナ』レビュー

機械たちの叛乱

アレックス・ガーランドによる初監督作は低予算ながらセンス・オブ・ワンダーに満ちたヴィジュアルと知性に訴えるシナリオ、そして躍進著しい若手3人の演技合戦が魅力の1本だ。

巨大検索サイトでプログラマーとして働くケイレブは社内懸賞に当たり、伝説的社長ネイサンの住む山荘に招かれる。しかし、彼が呼び出された本当の理由はネイサンが開発したAI=人工知能のチューリングテストを行う事だった。そのAIとはガラス細工のような機械の体に絶世の美女の顔を持ったエヴァというロボットで…。

2人のテストを見ていると僕たちは「ひょっとして試されているのはケイレブ(人間)側ではないだろうか?」と気づくはずだ。徹底された演出の下、豊富なニュアンスを込めたエヴァ役アリシア・ヴィキャンデルの身体表現は清廉潔白、無垢そのものでありながら、そもそも人間の存在など少しも意に介していないのではないかという怖さも同居する。オスカー受賞の「リリーのすべて」より格段と記憶に残るブレイクスルーだ。

方やケイレブ役ドーナル・グリーソンも好投が続く。ずばりナチスそのものを連想させた「フォースの覚醒」の悪役、荒野にエレガンスを持ち込んだ「レヴェナント」、そして純朴なIT青年の本作と彼の演技的好奇心が伝わるカメレオンぶりである。
社長役オスカー・アイザックも演技への知的好奇心が伺える俳優だ。実はAIをセクサロイドとしか見ていないその下卑な本性が本作の裏テーマにもなっている。

これまで幾度も語られてきたマシンの反乱モノと読むのはもちろんだが、これは男に助けられるのでもなく自らの力で男を倒し、自由を手に入れる女性性の叛乱こそがテーマなのではないか。プラグインするでも電送するでもなく、耳打ち1つで全てを覆すエヴァの魔性に鳥肌が立った。改めてムーヴメントとなりつつあるウーマンリヴ映画の隠れた先鋒としても記憶しておきたい1本である。

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エクス・マキナのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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