映画『ボーダーライン』レビュー

息が出来ない

 予告編を見た印象だとマイケル・マンあたりの硬派なクライム・アクションを期待するが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は本作をミステリー、もしくはスリラーとして演出することを選んだ。

 エミリー・ブラント演じるFBI捜査官は実戦経験を買われ、メキシコの麻薬カルテルの中枢を捜査する任務にスカウトされる。凶悪な犯罪者を倒せると意気込む彼女だったが、肝心の任務はまともに説明されないばかりか、想定外の現場で規定や権限を超越した作戦を目の当たりにする。強引なやり方に傍観者とならざるを得ない彼女は、一体誰がこのような作戦を指揮しているのか、そしてミッションの真の目的を探ろうと決意する。

 観客は主人公と同様に最低限の情報しか与えられないまま、謎の中を手探りで進む羽目になる。ミステリーならば大事なのは待ち受ける真相の意外性だ。確かに本作が提示する真実は衝撃的ではあるものの、アメリカが世界各国で展開してきた諜報活動を振り返れば想定の範囲内であり、意表を突かれるようなものではない。

 何よりアクションも難なくこなす筈のエミリー・ブラントのタフな魅力が飼い殺しなのは勿体無い。役柄上傍観者になるのは仕方が無いとして、ほとんどの場面で見せ場を共演者に譲り、ギブスをはめた患者のように動きが封印されている。真実を探ろうとする姿が映画的な興奮に繋がらず、息苦しさを感じてしまう。

 この閉塞感は作り手が意図したものだ。残酷な真実の前で成す術も無く唇を噛み締める主人公の歯がゆさを、観客にも疑似体験させようとしている。その試みは正しく、そして成功しているのだが、閉塞感を打破する映画らしい一撃が欲しかった気もする。

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ボーダーラインのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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