映画『ルーム』レビュー

もうルームにはいられない

 ひとつの部屋の中で7年間も監禁されていた女性と、その間に産まれた5歳の息子の脱出劇とその後を描いた作品。実際にオーストリアで起こった悲劇に着想を得ている。

 隙の無い監禁生活からどのように脱出するかが見せ場の一つではあるものの、その点に関しては映画開始から40~50分ほどで処理される。脱出劇は物語の中において“承”の部分にしか過ぎず、むしろ脱出後の展開こそがメインとなる。

 好奇の目を向けるマスコミから身を隠すため、そして生まれてからずっと狭い部屋の中で過ごしてきたが故に精神的にも肉体的にも外の世界に出すのは危険なため、親子は自宅の中に閉じこもる生活を余儀なくされる。しかも7年もの歳月は当事者たちの人生を大きく変えてしまった。被害女性の家庭はとうに崩壊し、解放された娘を抱きしめて食卓を囲む余裕すらない。監禁生活から脱出したのに開放感も無ければ再び部屋の中で過ごす羽目になるとは、なんとも皮肉である。

 それどころか幼い息子は監禁されていた歳月を懐かしく感じ出す始末。残酷な犯行現場も少年にとっては彼が知る唯一の世界であり、思い出のつまったふるさとでもある。そしてそこで片時も離れず過ごしてきたからこそ、母親から離れられずにいるのだ。

 ルームに別れを告げるクライマックス、それは思い出の中に囚われることをやめ、少年がほんの少しだけ母親から離れる成長の過程だ。人それぞれ辿る道は違えど、ルームを飛び出して広い世界へと旅立つ瞬間は必ずやって来る。

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ルームのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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