映画『レヴェナント 蘇えりし者』レビュー

詩心なき詩

巻頭、いよいよ神がかるエマニュエル・ルベツキのカメラワークに圧倒される。狩猟隊と先住民達の死闘は複雑なオペレーションでありながら全てがマスターショットとして完成された構図を持つ。曲芸的な長回しはルベツキにとってもはや挑戦ではないのかもしれない。

おそらく最も困難だったのはマジックアワーの自然光にのみこだわった撮影コンセプトではないだろうか。過酷な自然環境の中で激しいスタントが繰り広げられる本作はオスカーを競った「マッドマックス/怒りのデス・ロード」同様、カメラにありのままが収められているというエクストリーム間がストーリー以上に2時間40分を牽引する原動力となっている。これはここ数年アメリカ映画で着実に進んでいるアンチVFXという潮流で、主演男優ディカプリオが様々な受難に会うある種の“見世物感”が異例の大ヒットを後押ししたかもしれない。

恐れを知らぬディカプリオは勇猛果敢なスタントだが、復讐心に突き動かされた主人公を静的な心理表現で演じており新境地だ。対照的に“クサい芝居”で際立つトム・ハーディの怪優ぶりも本作を語る上で欠かせない。

問題はこれが一体“誰の映画か?”という事だろう。ルベツキの超然としたカメラによる大自然と人間の対比は当然テレンス・マリックの映画を思い起こさせるが、ここには映画館の闇に身を沈めたくなるような瞑想的な静寂はなく、観る者を陶酔させる詩心を感じなかった(坂本龍一らが手掛けた劇判が終始鳴り響くミスマッチな音響にも問題はある)。果たしてイニャリトゥの作家性とは何なのか?人間の業と情念を描くオムニバス構造は後に監督デビューした脚本ギレルモ・アリアガの手法と判明し、「バードマン」から本作に至る“カメラ至上主義”はルベツキの作家性である。何が言いたいかって?2個のオスカー監督賞はあげ過ぎってこと!!

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レヴェナント 蘇えりし者のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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