映画『マクベス』レビュー

神聖こまったちゃん

 どうしようもなく、マイケル・ファスベンダーの動向が気にかかる。自身を傷つけることでしか快楽を得られない脆さを秘めた男を力演した出世作『SHAME -シェイム―』(11)、ふなっしー×マトリョーシカ風の張りぼてで正統派二枚目マスクを覆い隠す『FRANK -フランク―』(14)、天才的なアイディアマンだが人間的には問題大アリのセレブリティをナチュラルに巧演する『スティーブ・ジョブズ』(15)など、バラエティ豊かなフィルモグラフィを彩る役柄たるや、遠くで観察する分には面白過ぎるが、実際にはあまりお近づきになりたくない、奇人・変人・曲者揃いである。

 その流れを汲めば、かのシェイクスピア作品の中でも、どこか取っ付きにくく共感しづらい印象の『マクベス』のタイトルロールを演じるのも、必然であったように思われる。自らの手を汚し王の座を奪取するも、途方もないものを手に入れれば、失うものも遥かに増す。過剰なストレスで眠れぬ夜が続いたマクベスが、次第に不安神経症に陥っていく様を、ファスベンダーは常軌を逸した狂気というよりも、あまりに急激な状況の変化に身も心も追いつかない凡人の悲哀すら漂わせ、人間くさく体現する。

 さらに共演が、いかなる役にも血を通わせてきた演技派マリオン・コティヤールゆえ、いわゆる”悪妻”のマクベス夫人とは、一線を画す。幼い我が子を亡くした心の傷も未だ癒えない、愛情深き母親にして良き妻の行き過ぎた内助の功が、愚直な夫の幼稚な野心に、最悪の形で火をつけてしまう……。約400年の時を超え、何とも実感の伴った夫婦によって引き起こされる、説得力溢れる悲劇として現代に甦った。

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マクベスのポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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