映画『レヴェナント 蘇えりし者』レビュー

神は見ている

 もしもあらゆる時代のあらゆる出来事を自由自在に記録できる監視カメラがあったとしたら。そのカメラを覗く者はこの世で起きる全ての出来事の因果関係を知ることができるだろう。すなわち「神の視点」である。

 本作で3年連続アカデミー撮影賞受賞の快挙を達成したエマニュエル・ルベツキが繰り出す映像は、当時の状況を再現することに全力を注いでいる。撮影機材を持ち込むことすら困難なはずの環境で自然光のみを頼りにする本物志向で、お得意のワンカット長回しはそのままにカメラは上下左右360度、登場人物の息遣いから戦闘の緊迫感まであらゆる出来事を記録してみせる。熱心な神様があの山で起こった惨劇の一部始終を見ていたとしたら・・・まさにそんな「神の視点」を再現した映画である。

 神の視点から眺めた人間の姿は、なんとあやふやなのだろう。大自然の中において人間の命はあまりにも小さく、摘み取られる雑草のごとく簡単に奪われてしまう。一方でディカプリオ演じる主人公が体現するサバイバルは人間の驚異的な生命力を主張する。凄惨な争いを繰り返す人間に哀れみの目を向けながらも、物語は復讐という狂気に向かって進んでいく。自らが矛盾したテーマを内包している本作は、言葉ではなく映像で語りかけてくることを選んだ。作品の本質を見抜いたアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督の勝利である。

 神の視点に立った僕たちは、罪を犯したのは誰か、裁かれるべきは誰なのか、当然全ての出来事を知ることになる。しかしどんなに復讐を誓う主人公に肩入れし敵を憎んでも、加勢することは出来ない。ただただ傍観者であることを強いられるのだ(映画だから当たり前だとか、そういう意味ではない。)救済や罰は映画を観終わり心の中で咀嚼した時にのみ存在する。これが神の視点なのだろうか。

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レヴェナント 蘇えりし者のポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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