映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』レビュー

ニッポン昆虫記

 岩井俊二の作品に登場する母親たちは、どこか歪んでいる。ややこしく入り混じった子どもへの愛憎が、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(93)では暴力的な、『花とアリス』(04)ではコミカルな形で噴出し、母と子を、容易には絶ち難い厄介なしがらみで、縛りつけ続ける。

 久々の日本での劇映画となる本作にも、”リップヴァンウィンクルの花嫁”を取り巻くように、バラエティ豊かな母親が登場する。夫と娘を捨て、若い男に走った実母(短い出演シーンも、さすがなインパクトの毬谷友子)。年甲斐もなく、息子を一筋に溺愛する義母(パブリックイメージを逆手にとる原日出子)。そして、長らく疎遠になっていた娘と、意外な形で再会する母(ラスボス的貫禄を見せるりりィ)……。親としても人間としても、完璧からは程遠いけれど、妙に生々しい熟女たち。

 そんなパワフルなおばはん連中らに、振り回されっぱなしのヒロインにふんするのが、売れに売れている黒木華。昨年の『幕が上がる』『ソロモンの偽証』『母と暮らせば』に続き、またしても教員(しかも派遣)役。思えば、教員というのも、生徒あっての不確かで相対的な存在ゆえ、”受け”の芝居に秀でた彼女に、しっくりハマるのかもしれない。今回も、『シャニダールの花』(13)の運命の恋人役から一転、天使か悪魔か最後まで判別できぬ謎の男を快演する綾野剛を相棒に、どす黒い現代社会の荒波をたゆたいつつ、可愛いふりして割とヤる娘を、3時間出ずっぱりながら、力の抜けきった佇まいで飄々と好演している。

 らしからぬ爽やかな幕切れに意表を突かれる、岩井俊二流、現代のおとぎ話であった。

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リップヴァンウィンクルの花嫁のポスター
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服部香穂里のプロフィール画像

服部香穂里

映画界の末端で、浮草のように漂うております……。

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