映画『クリムゾン・ピーク』レビュー

生者と死者の織り成す世界

 幼い頃に母を亡くしたイーディスは、それ以来霊を見るようになる。大人になり男爵との結婚を決意した彼女は海外の田舎にある古びた屋敷に移り住むが、そこでも霊に脅かされるようになり、次第に精神を病んでいく。

 実は僕たちの住む世界には霊がうごめいていると聞けば、不気味に感じられるだろう。この世に未練を持った霊が危害を加えるというのはよくある話だ。一方で霊も千差万別、背後霊や守護霊のように親しい者を守ろうとする霊も知られている。影に紛れて忍び寄る霊は、敵か味方か。スピリチュアルの世界は恐怖でもあり、同時に神秘的で人間の想像力を掻き立てる。危険だと知りつつも暗闇に潜む者の正体に触れたいと思う、本能的な「怖いもの見たさ」に訴えかけてくる。

 ギレルモ・デル・トロ映画らしい湿り気を纏ったグロテスクな美術や衣装の数々は必見。後半の舞台となる古びた屋敷は実際に巨大なセットを建造し、主人公を悩ませる亡霊も特殊メイクを施した俳優によって演じられている。もちろん撮影後にVFX加工が施されてはいるものの、本物ベースの映像は生者と死者が表裏一体で織り成す世界観にこの上ないリアリティを与えている。真っ暗な映画館で堪能するスクリーンいっぱいのゴシックファンタジーは、ちょうど明かりの消えた寝室で布団に包まりながら懐中電灯を頼りに絵本を読んでいるかのようだ。

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クリムゾン・ピークのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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