映画『完全なるチェックメイト』レビュー

僕の人生チェックメイト

 冷戦期にチェスの世界チャンピオンとして活躍したボビー・フィッシャー。チェス界では指折りのレジェンドであり数多くの実績を誇る彼だったが、その生涯は波乱に満ちたものだった。

 劇中の言葉を借りればチェスは四手打つだけで3000億通りのパターンが存在し、一回の対戦だけで銀河の星の数ほどのルートが考えられるそうだ。もはやスーパーコンピュータでなければ太刀打ちできないような天文学的な選択肢を相手にするわけだから、プレイヤーには相当な負担が掛かってしまう。そのために精神を病んでしまう者が後を絶たず、ボビー・フィッシャーもその一人だった。

 薬物やアルコール、女性問題など本業とは関係ない要素で転落するスターは数多いが、本業そのもので身を持ち崩してしまうというのは珍しいケースと言えるだろう。ボビーにとってチェスは最大の武器であり、同時に最大の劇薬でもあった。

 「星の数ほど選択肢があっても打つべき手はただ一つに決まっている」という彼のチェス哲学そのままに、チェスと出会ったその日から精神が崩壊する未来が既に定まっていたかのようにすら思えるのは、皮肉と言うべきか、はたまた運命の悪戯か。数々の強敵を下してきたボビーも、自分自身に突きつけられたチェックメイトは覆せなかったのだろうか。

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完全なるチェックメイトのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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