映画『オデッセイ』レビュー

「やらない」=「死ぬ」。

見方を変えれば、現実世界でも変わらない。誰にでも一つはあるだろう。大げさに言えば「やらない=死ぬ」くらいに大事なこと。けれど、日本のような場所に生きていると「やらない=死ぬ」にはなかなかならない。

火星に取り残されたワトニー(M.デイモン)の場合は、そうはいかない。彼は次のミッションまでの間を生き延びると選択した。そしてその選択を成就するには、やることを探し、決めて、やるしかなくて、やらない=死ぬ、なのだ。

実際には数年を要する物語の中で、描かれていない部分もたくさんあろう。その中で彼が、疲れたり、悩んだり、倦怠と停滞に見舞われていたこともあるんじゃないか…と考えてしまった。難問を一つ一つ片付けていく様は見事だが、腐ったとき、あきらめそうになったとき、彼がどう持ち直してリスタートしたのか。個人的に一番知りたいのはそこだったりする。

逆に、火星にいるくらいのほうが追い詰められていいのかも?なんて思ってしまった。現実には、身の回りに気を逸らせるものなどいくらでもある。家事、仕事、SNS、電話、メール…。気がついたら一日が過ぎている。何から手をつけていいか分からない、けれど何よりも大事なはずのことが、一歩も進んでいなかったりする。

誰もがダメだと思う。応援はするけど「そんなことまで自分はやらない」と思う。でもそんなことを「やる」と言い出した一人が動く。声を出す。それで周りが動き出す。周りが動くから、自分も止まっていられない。そして誰も一人で、何を成すこともできない。壮大なSF叙事詩を支えるのは、そんな単純で強固な真理だ。

観た後に出た街は、騒音と看板で、目にも耳にもノイズが酷かった。iPhoneで見るニュースの酷さが脳に絡んだ。澄んだ気持ちと研がれた身体で「やること」に取り組みたい。それも自分で作るのだ。さあどうやるか。目の前の問い。手当たり次第に解いていこう。

8
オデッセイのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0
Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

映画『オデッセイ』に対するDaisuke O-okaさんのレビューにコメントする

アカデミー賞2017

こんな作品もレビューされてます

さよなら、僕のマンハッタンのポスター

NYには全てがある、のか?

 巻頭早々、ダイアログを聞いて僕はポール・オースターや村上...

ミッドナイト・サン タイヨウのうたのポスター

うた唄いの恋

  つまらない作品がリメイクされることはないが、その逆は十...

ヴァレリアン 千の惑星の救世主のポスター

圧倒的な創造量の多さ

 リュック・ベッソン監督の描くSFの世界観が好き。 SF映画を...