映画『ブラック・スキャンダル』レビュー

出来る男の仕事術

 ジョニー・デップ演じるバルジャーは、かつてボストンの裏社会を制覇した実在の犯罪者。彼は他のマフィアとの抗争の中で部下を動かして邪魔者を始末するだけでなく、自らの手で積極的に殺人に関与し、長らくFBIの最重要指名手配犯の一人に名を連ねていた。

 敵・味方問わず自らの不利益となりそうな人物を何の躊躇いも無く殺害していった彼はまさしく生まれ持っての人殺しだが、単なるサイコ野郎と一蹴されるような器ではない。

 同級生に暴力を振るった幼い息子に対して放つ「殴るなら誰も見ていない場所でやれ」という台詞が印象的だ。感情的になって悪さをしても足が付くだけで、どうせなら誰も見てないところでやれば罪にすら問われないわけだが、この教えにバルジャーのスマートな仕事術が表れている。

 周囲には信頼できる仲間だけを置き、実行役・後始末役といった仕事を割り振って問題解決はいつでもスピーディ。上院議員の弟やFBIの幼馴染と結託して情報提供の代わりにシノギを黙認させ、ライバルに優位性を保持して勢力を拡大。しかしタンマリ稼いだからといって成金趣味とは無縁のライフスタイル。物々しい豪邸に愛人を囲って薬に溺れることもなく、不衛生な食事マナーの部下を叱責するなど、とても人殺しとは思えない常識人な一面も。表面は冷酷に見えても家族想いで義理に厚く、何より裏切りを心底毛嫌いする誠意の高さは「地元民から人気がある」という説明も納得だ。

 カリスマ的仕事術で事業を急成長させる敏腕経営者のように、本作はある意味裏社会のサクセス・ストーリーを描いた物語と捉えられるかもしれない。もちろんバルガーの悪行を肯定するつもりは一切無いが、たとえ悪人だと分かっていてもその闇に引きずり込まれたいとすら思わせる魅力が確かにある。

8
ブラック・スキャンダルのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0
奥 直人のプロフィール画像

奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

映画『ブラック・スキャンダル』に対する奥 直人さんのレビューにコメントする

こんな作品もレビューされてます

僕はイエス様が嫌いのポスター

また逢う日まで

  思いもよらぬ事件や事故に胸を痛めるにつけ、こんな世の中...

名探偵ピカチュウのポスター

ピカぴぃ・・ピカピカ

 ピカピい・・ピイカピカ 通じてますか? ケンワタ...