映画『ターナー、光に愛を求めて』レビュー

世界は光に満ちている

 18~19世紀にかけて活躍したイギリスの画家、ターナー。ロマン主義に分類される彼の作品は、特に後期になると画面が光に満ち溢れた抽象的な風景画が多くを占めるようになっていった。今日では広く愛でられているそれらの作品も、発表当時は「サラダのよう」とか「洗剤で描いた」などと散々な言われようだったわけだが、ではどうして彼はそのような描写に心血を注いだのだろうか。

 その謎を解き明かす上で印象的なエピソードが劇中には2つある。一つは女性数学者メアリー・サマヴィルによる光の不思議な性質を明らかにする実験を熱心に見守るシーンであり、もう一つは当時駆け出しの技術だった写真に大きな興味を示すシーンである。共通しているのは彼が科学に一定の理解を持っていたこと、特に“光”に対して強い関心を抱いていたことである。

 「この宇宙における最高速度(いわゆる一秒で地球7周半)」だとか、「粒としての性質と波としての性質を同時に持つ」など、光は現代科学において最も不思議で神秘的な要素の一つとして知られている。もしかするとターナーは人間の常識では理解し難い光の特異性を直感的に見抜いており、その中に神の存在すら感じていたのかもしれない。だとすれば絵画の中で煌々と輝く太陽は、実は彼の信仰の表れだったとも考えられるだろう。

 きめ細やかな伏線の数々が想像力を刺激する良作だが、ターナーを取り巻く人々や芸術アカデミーなどの舞台背景の説明が極力省かれた物語は、かなりの予備知識が無ければ置いてきぼりにされること確実。その辺りに関しては公式サイトで丁寧な説明がなされているので必見だ。恥ずかしながらこれを読んでいなければ間違いなく「???」の連続で寝落ちの恐れもあったので、この解説こそまさに僕にとっての光であった。

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ターナー、光に愛を求めてのポスター
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奥 直人

映画暦15年。思いのままをレビューにぶつけていきます。

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