映画『氷の花火 山口小夜子』レビュー

「美」の依童。

今年1月からわずか数ヶ月の間にここまでの物量で仕上げてきた本編に感服する。インタビュー出演の錚々たる顔ぶれ。日本のファッションが「美と消費」という相反する要素を内包しながら猛スピードで駆け上がった時代の、まさに先端にいた女性だ。

セルジュ・ルタンスが彼女との取り組みを語る言葉は、日本人各位のそれと次元を異にする。「美は時間を支配し、不死鳥のように甦る」。そんな言葉が生まれるほどのセッション。デジタル合成などない時代に、あれほどのコマーシャル・アートを作り出す感性と技術。それを引き出したのも山口小夜子という存在なのだ。

ただ、それらが出るほど「どんな生活してたんだろう?」「どんな思いを抱いてたんだろう?」という疑問も湧く。誰にも弱い部分はあって、それを日々の動きの中でどう受け流し、克服していたのか。

そこに視点を絞ると、彼女が舞踏に傾倒した理由も想像できる。ある意味彼女は「美」にとっての「依童」を務めようとしたのではないだろうか。体を動かし、声を出して、人以上の何かが湛えているものを人の前に出してくる。全ての行為は肉体を通じて表現される。誰かが作ったものを纏う存在が何かを伝えようとすると、纏う以上の行為が必要になる。

世界中の都市で開催されるショー。無数の広告撮影。俗世の欲得が押し寄せる中、数多くのライバルたちとの鞘当てがあったことも想像に難くない。その中で彼女は「唯一」でありたいと望み「依童」という務めを見出したのだろうか。そうなれば、パーティ漬けでスランプの中「モンドリアン」の意匠にたどり着いたサンローランの求道にも通じると感じる。

ねえ、そうだったんですか?貴女はそんな風に歩んでいったんですか?…直に訊いてみたい。訊いたらお茶目に、はぐらかされるんだろうか。「そんな難しい話よしましょ」なんて言いながら、今頃ダイアナ・ヴリーランドなんかとお喋りしてるんだろうか。

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氷の花火 山口小夜子のポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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