映画『図書館戦争 THE LAST MISSION』レビュー

世界は現場。本は人。

前作より重い。昨今この社会を覆う空気とは無縁じゃない。全ては絶えず相克していて、調和が取れることはない。白か黒のどちらかに全てを寄せることは不可能で、この映画はそんな世界の本質を「IF」を通じて際立てている。

慧(松坂桃李)の狂気にも一理ある。WEBにも既存メディアにも耳目を塞ぎたくなるような荒れた言葉が並ぶ。慧の背後にどんな窮地がありどれほど血が流れたのか。細々と語らず、目力ひとつで思想を体現する様は圧巻だ。

彼が眺める人々は、図書隊と良化隊の両極の間にある巨大な「無関心」の象徴だ。一方、仁科司令(石坂浩二)は「この世界には守るべき価値がある、この身を賭けてでも」と訴え「無関心」の人々やその思想思考をも全てひっくるめて守ると宣言する。

上層あれば現場あり。慧に「直接来い」と言う堂上(岡田准一)の言葉は象徴的だ。どんな政治も、現場で表現されて結果となり、初めて世の動きとなる。役者たちの佇まいや表情から滲み出る意志。本を書架に入れるその身体でさえ、何かを語っているのだ。

そしてこの映画は笠原(榮倉奈々)の通過儀礼でもある。被弾した堂上を置いて一人で駆け出すとき、笠原は守られる存在から守る存在に脱皮する。自分の思い人だけでなく、それをも包み込むより大きなものを。

あと、平時の笠原の「手」の動きがとても佳いのだ。ひらひらはたはた「口ほどに物を言う」手が、この作品のもう一つの支柱に体温を通わせる。

上記の面々は勿論のこと、小牧(田中圭)光(福士蒼汰)柴崎(栗山千明)玄田(橋本じゅん)、全員が「そこにいる」。手でつかめるほどに彼らの存在を「確か」にした作り手全員に、心から羨望と敬意を贈る。言葉をいくら積んでも届かない現場の力。それを物語るのは人たる本。本から生まれて肉体を経たこの映画は、仕事にも人生にも通底していて、おれは静かな勇気をもらったのだ。

特別ドラマも必見。

10
図書館戦争 THE LAST MISSIONのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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