映画『ブラックハット』レビュー

孤高の監督マイケル・マン

リサーチ魔が祟って実に5年ぶりとなってしまったマイケル・マン監督最新作はその努力の甲斐なく全米で大コケ、大酷評に終わってしまったが、一体何だと言うのだ。ベン・アフレックが「ザ・タウン」で、クリストファー・ノーランが「ダークナイト」で、「ブレイキング・バッド」も「ウィンターソルジャー」もフォローした90年代最重要作「ヒート」のマイケル・マン監督の新作である。アメリカの批評家はイーストウッドの「ジャージーボーイズ」にも手厳しかったが、巨匠の作家主義に時に不寛容だ。しかしここにはフォロアー達が触発されたシビれるようなエッセンスがオリジンとしての輝きを放っているのである。

もちろん、ネット犯罪は御歳72才の巨匠には不似合いではある。PC内部にカメラが潜り込むSF演出、キーボードのSEは何とも時代錯誤だし、リアリズムも疑わしい説明台詞を吐く名女優ヴィオラ・デイビスは心許なさ気だ。

それでいい。マイケル・マン映画にとってそんな物は吹けば飛ぶ紙飾りにしか過ぎない。香港映画ですら成し得ていないクールでセクシーなランドスケープを見よ。マイケル・マンは世界でも指折りの“都市を撮る監督”だ。その街に孤高の男と女、身を焦がすような危険と銃砲が内包されるとそれはどこから見ても紛う事なきマイケル・マン映画というルックス、これぞ“作家の映画”。誰がフォローしようと御大のスタイルが唯一無二のカッコ良さである事を十二分に堪能させてもらった。

ハッカーなのにガチムチな雷神様ことクリス・ヘムズワースがキャスティングされているのも、クライマックスから逆算された“マイケル・マン方程式”だ。ほとんどファンタジーのようなのだが、これをリアリズムで成立させるのが様式美である。
マンが一作毎にかける製作期間を考えるとこうしてスクリーンで新作を見られる機会はそう多くはないのかも知れない。孤高の漢気、とくと見よ。

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ブラックハットのポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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