映画『劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス』レビュー

トロールハンターは手をこまねいている

振幅のないストーリーの割に評価が高かった『ムーミン 南の海で楽しいバカンス』はあっという間に公開終了したのだが、日の目を見なかった佳作として観覧したのであり、と言うのも、ムーミン谷ではどいつもこいつも素っ裸で暮らしているにもかかわらず金持ちまみれの避暑地で水着に着替えたノンノンを一瞥して「そんな格好ダメだよ、何も着てないみたい」と誰もが鑑賞中に「はっ!」とさせられる忠告をするも、ノンノンに激怒されると同時にもはや世界を二分してしまうのであり、ノンノン(若い女性)はあたかも全てが許されるかのような華美な世界に耽溺している=自分の欲望を全面肯定している「自由」をムーミンは嫉妬するかのように、恋敵に時代遅れの決闘を申し込んでにっちもさっちも行かなくなり童貞丸出しで愛の形を表現しよう試みたのだが、しょせん童貞は童貞にしか過ぎないことを露呈した挙句に、最終的にはホテルが親切で接客してくれていたと思い込んでいたムーミン一家を救ったのも、この欲望に目覚めた、貨幣経済を理解し熟知したノンノンに他ならなかったのはなんとも皮肉と言うほかなく、「お金だけが全てではないよね」と言うおめでたい武者小路実篤みたいな連中と「世の中やっぱり金だ、金で解決できることがほとんどだ」と言うクリスマスキャロルのスクルージみたいな連中ともに与しない生粋の呑気さが作品の後味をよくしている。

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劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンスのポスター
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弐個 四のプロフィール画像

弐個 四

本棚に並べたDVD画像をSNSで自慢げにさらすような大人にはなりたくない。

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