映画『イン・ザ・ヒーロー』レビュー

夢。仕事。貢献。挑戦。この映画に全てがある。

唐沢寿明演じるスーツアクター本城はイイ年齢のオッサン。夢を追いながらも、続く後輩を育てることに懸命だ。それに抗う若手スター一之瀬(福士蒼汰)にも彼なりの想いと事情がある。彼らを支える人間たちも味わい深い。強面で鳴る寺島進アニキがピンクのスーツを演じるのはコアヒット。長身美麗の黒谷友香が関西弁の格闘姐ちゃんなのも好感大。ギャップを配した人物造形が観る側を物語に惹きつける。個人的には一之瀬の実直なマネージャー門脇を演じる小出恵介の芝居に惚れ込んだ。佳え男やあんた!

各々が各々の仕事を究めながら「面白い映画」の一点に向かって突き進む。一之瀬の空回りが現場にトラブルを起こす様を描くからこそ「分とは何か」が引き立つ。米映画P石橋(加藤雅也)の手の平返しも凄い。「あの場」で「あの振る舞い」で説得を試みる気概。だから映画が「出来る」のだ。

本城と一之瀬が神社で特訓を始めるシーンから、熱い涙が止まらない。成功しない自分の何がダメなのか、それは周囲に心を開いて初めて判ることなのだ。この物語はあくまで「陽」の物語だ。しかし、現場を踏み越えてきた数多くのスタッフの経験と想いが反映されたディテールが誠意をもって積み重ねられ「所詮絵空事だろ」という浅い侮りを乗り越えていく。

本城やクラブの面々から受け継いだ心技体でたった一人で立ち向かう一之瀬。本城の見せ場に貢献しようと集まる面々。全員と一人、その対比を物語に埋め込んで起伏させた脚本に拍手。誰もがそこにいるだけで、何かを背負っているのだ。

夢を追う自分にとって、何が果たすべき務めなのか。それを掴んで初めて、夢への道が拓ける。夢だけ追って空を飛ばしてくれるワイヤーなんて、人生には無い。そしてワイヤー無しで飛ばないと掴めないチャンスが来る頃には守るものが増えすぎていたりする。人生長い。まだまだ足掻こう。鍛えよう。

この映画には感謝するほか無い。

10
イン・ザ・ヒーローのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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