映画『テロ,ライブ』レビュー

お前ならどうする?!

ラジオをスタートに据えたのは正解。リスナーからの電話を直接受けるスタイルはマスメディアではほぼラジオだけだ。そして突発的な状況にも「画」を用意せずに済む。ヨンファ(ハ・ジョンウ)は状況を受けて局上部との交渉に臨むが、中座の間は天気や交通情報、音楽などで埋めておけばいい。穴埋めに奔走するスタッフなど知ったこっちゃないヨンファの傲岸さが、後の展開に生きてくる。

その展開が凄い。ヨンファのみならず局長(イ・ギョンソン)も含め、この事件を自分の出世の足がかりにすることしか考えていない。スクープを独占し、視聴率を稼ぎ、テレビの主役に復帰する。そんなヨンファの目論見が、一瞬にして崩れる様には総毛立つ。ヨンファの都合など知らず局長がヨンファを踏み台にする。敏腕記者である元妻は現場で生死の狭間にある。全方位からタコ殴りにされながら眼鏡を直し平静を装ってMCを続けねば未来が無い。序盤の傲岸さは一瞬で木っ端微塵にされ、綱渡りの全力疾走を強いられる。

犯人からの電話をメモしようにもペンのインクが出ない。自分なりの突破口を開くために使うスマホが床に落ちて手が届かない。細かなジャブをタイミング良く(悪く)配置して、ヨンファを徹底して苛め抜く脚本は容赦ない。

ヨンファはある意味でメディアで働く個人個人の代表だ。社会の公器などと称しながら「大人の事情」でなびかざるを得ない。その事情も自分より大きな何者かによって人権もなく暴かれ利用される。社会に一難起こったとき、組織も個人も保身に走る。その貧しくも哀しい本質が本編の恐怖の土台になっている。

あらゆる「破壊」を経たヨンファが孤独にOAを復帰させようと挑む姿には熱くなる。そしてテロリストとの交感。リアルタイム90分でつながれた、正に「ライブ」。このアドレナリン感、メディアマンなら破滅するまで乗ってみたい絶叫マシンだ。

…ごめん。やっぱり怖い。

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テロ,ライブのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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