映画『思い出のマーニー』レビュー

とにかくベタベタ抱き合いたいのよ、私たち。

杏奈は自分が生まれつき虐げられた者であると言う固有の世界を持っている。またその世界は不可侵で土足で踏み込まれることを拒んでいる。それは杏奈の性格悲劇のはじまりでもあって、一度その聖域を侵されるとたちまち臨戦態勢となる。その性格を彼女は嘆いているが本当の嘆きは自分ではどうにもならないところにある。自己嫌悪は完全に袋小路に閉じ込められている。
マーニーとの出会いは時空を超えた霊的な交感や遊眠状態(あるいは月の力)によってもたらされる。この交感は両者の境遇の一致と同朋意識によって支えられ、秘密にされることでより高い次元に昇ってゆくようように見える。
ひとつだけ二人の親和の向きがズレる場面がある。パーティーで、マーニーの幼なじみの和彦と流暢に踊り、両者の親密な仲があらわになる場面だ。そこで杏奈は視線を外しつつ、仲の好さをためらいながら嫉妬する。
この場面は高次元の秘密の世界を築いているので、どうしても同性愛的な傾向を示しているようにしか見えない。
ただし、この同性愛的な傾向が学童期の少年や少女が男女未分化のまま自然な傾向として描きたかった、そうした作者(監督)の意欲を感じた。そしてそれはうまく表現されていると思った。言ってしまえば物語の意外性や感動よりも同性愛的な親和力を描きたかったのではなかろうか。その表現の中には、過剰なほどに身体的な接触があってもそれもまた少年少女の表現のひとつなのだと感じさせた。
少年少女たちは「秘密」を盾に大人を拒むが、主人公の杏奈は「秘密」をお土産に世界と折り合いをつけ、和解し、大人になる。この大人とは、現に杏奈の前にいる大人たちがすでにモデルになっているのだとも言える。大人たちもまた安奈と同じ体験をしたと思わせる、そんな善良さを持っている。
しかし秘密は秘密のままに、杏奈は周囲の大人にもマーニーのことは話さない。この秘密は不朽であることを予感させる。

7
思い出のマーニーのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0
弐個 四のプロフィール画像

弐個 四

本棚に並べたDVD画像をSNSで自慢げにさらすような大人にはなりたくない。

映画『思い出のマーニー』に対する弐個 四さんのレビューにコメントする

こんな作品もレビューされてます

ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリーのポスター

I have a bad feeling about this.

  銀河を股にかけた壮大なスペースオペラを展開する正史とは...

猫は抱くもののポスター

そして猫になる

  独立心旺盛な猫は、自分がひとよりも劣っているなんて考え...

サバービコン 仮面を被った街のポスター

未来は子供達に宿る

 1950年代アメリカ、閑静な住宅地“サバービコン”にとある黒人...