映画『友よ、さらばと言おう』レビュー

「体幹」の映画。

「体感」ではない。「体幹」である。

大抵のハリウッド・スタジオ映画は、例えて言うなればマシンとサプリメントで腕や脚のバルクを増やしたボディビルダー。この映画は日々の仕事で体幹が鍛えあがった労働者。シモン(ヴァンサン・ランドン)やフランク(ジル・ルルーシュ)を筆頭に、登場人物に一切の虚飾がない。港町マルセイユの殺伐な空気の中、仕事が刻んだ顔の渋さや肌のくすみ、くたびれた姿勢に、人生がにじむ。

カヴァイエ監督の前作「この愛のために撃て」「すべて彼女のために」でも、登場人物の描き方は変わらない。登場人物の造形はあくまで「その辺にいる人」で、観る側の日常に寄り添っている。事件は日常からの逸脱。日常を生きるだけで精一杯の人間たちが、逸脱した状況に立ち向かうからこそドラマが生まれる。ゴールは「家族」。今作はそれに加え「友情」をドライヴに突き進む。

今作のアクションも「魅せる」ものでなく、常人の戦いだ。秘密兵器も特殊技能もなく、ひたすら追い、走り、格闘し、撃つ。銃の扱いはまるで大工道具。現場百遍で染み付いた各々の動作は「無駄なし」と通り越して「無造作」でさえある。人間を常人にしながら周辺状況の設定でアクションをドライヴする描き方には、体温がこもっていて観る側を引き込む。

何かが明かされるラスト。しかしそれさえも全てを語ってはいない。語らぬことが、それを背負う人間の人生を観る側に刻む。友情も愛もアクションも入れてわずか90分、引き締まった仕上がりには舌を巻く。舞台も物語も小粒だが、スタジオ大作を超える堂々のノワール。舗道を踏む足元に、相手の肩に置く分厚い手に、人生をにじませる撮り方描き方。このアプローチで日本映画は作れないものか。やれるような気がするんだが。

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友よ、さらばと言おうのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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