映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』レビュー

Today is a good day to die.

今回も多忙で原作未読。しかし映画を観終わって即コミカライズ版を読破。映画の面白さが、原作者が鷹揚に翻案を受け入れて楽しむことから生まれていることは想像できる。原作読もう。

映画では冒頭をロンドン、戦場をノルマンディー、決戦をパリにして、観客の「戦場の記憶」を呼び起こす。数十体の「本当に着れる」戦闘スーツで撮るのも流石。ループの仕掛け、ループから外れる仕掛けも見事に機能し、ラストまで危機感が途切れない。

スカシ→ヘタレ→戦士というケイジ(トム)の成長は、そのまま彼のキャリアに通じる。若くしてスターに上り詰めた彼が、世情に揉まれて本物になっていく人生があるからこそ、表情一つにも説得力がある。ケイジをオトナにした翻案が見事にハマる。トムの「自分を笑う」鷹揚さが効く。

そしてリタを演じるエミリー・ブラントが素晴らしい!訓練所で腕だけで全身を床から宙に浮かすポーズ、「Full Metal Bitch」と呼ばれる行動と表情、ケイジとの会話で取り戻していく情動。ミラ・ジョヴォヴォッチ、ミシェル・ロドリゲス、古くはシガニー・ウィーバーまである「戦う女」の系譜に、堂々彼女も列席する。

本作のように死ぬたびに死ぬほうも死なれる方も痛みや恐怖を繰り返すのは想像を絶する。一方おれたちの現実の日常は、OKなこともNGなことも螺旋のように絡み合って進む。見方を変えれば自分のある一部分は「死んで」ある一部分は「生き残って次に行って」いるんだろう。

プエブロ族の言葉「今日は死ぬのにもってこいの日だ」が思い浮かぶ。全てを備えてあとは「やる」だけの日、全てを仕上げて「やりきった」日、どうにもならなくて一旦「壊す」しかない日。「死」という言霊を避けずに直視して、生まれる希望がきっとある。能天気なエンタメ大作だけど、観た後しばらく体内に「戦った」感が横溢する。確かに闘志もわいてくる。それでこそトム。

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オール・ユー・ニード・イズ・キルのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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