映画『私の男』レビュー

もし、二階堂ふみじゃなかったら…?

危うき父娘の関係が衝撃的に意味深に描かれていく。
なのに、見えすぎてしまう展開もちらほら。

二階堂ふみが逃げ、藤竜也が追う。その先は流氷。
きっとそうなるんですよね…。
おかげで、二階堂が叫ぶ「あれは、私の全部だ!」という名セリフの爆発力を全力で味わえなかった。

二階堂が藤を死なせた犯人だとの証拠を、浅野忠信に突きつけるモロ師岡。グツグツと煮えるシチューの蓋を開けるモロ。
きっとそうなるんですよね…。

確かに、物語や性描写は衝撃的かつ刺激的。
その一方で、衝撃的であればあるほど、その持続力は短く慣れやすくい。
たとえば、何度も映される指を舐める行為。
2人の関係を想像させ、匂いを絡ませ、愛液を視覚で見せ…と、それぞれのシーンに機能は載せられている。
でも、やっぱり飽きてしまった。
もしかしたら、二階堂が背負う比率が高すぎたのかもしれない。
彼女だからこそ演じきれたのだとも思うが、その一方で、「もし彼女じゃなかったら、もう少しフラットな目で『花』という少女を眺められたかも…」とも思う。

「ノン子36歳(家事手伝い)」で、あんなにも息を詰まらせた熊切和嘉監督×近藤龍人カメラマンによるラブシーンが、本作では説明的に感じる。

劇中、吹き出してしまったシーンが2か所。
浅野が、二階堂をタクシーで送ってきた高良健吾に「裸になれ」と詰め寄るシーンで「上だけですよ」と高良が観念するシーン。

もう一つは、二階堂に負けて東京に逃げた元カノを演じた河合青葉が、父の葬儀で戻ってきた時の髪型が茶髪のチリチリだったシーン。
とはいえ、前半の河合はよかった!
「妖精の声をしたミューズ」の看板を一旦下ろし、若さに嫉妬し敗北する女の小ささを演じきった。
おそらく素顔よりも老けさせて見せたメイクは、微妙な表情の歪みに多くを語らせる。

結論。少女「花」ではなく、二階堂ふみをお腹いっぱい観た満腹感。

6
私の男のポスター
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茅野 布美恵のプロフィール画像

茅野 布美恵Freak

地方誌の編集者。映画は、ノンジャンルで鑑賞。基本的には、劇場で愉しむ主義です。その作品を観ないとわからないレビューになる傾向あり。情けない男が出てくる映画や、青春ものが好物。マイケルホリック(Michaelholic=マイケルホール心酔者)にして、パトリック(デンプシー)教徒。

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