映画『チョコレートドーナツ』レビュー

涙目のウィンク。

私はゲイでもなく、ダウン症でもなく、差別に晒された経験がない。
だから、本当の悔しさや憤りや悲しみはわからない。
けれど、この映画のなかで彼らがそれらを体験していることがグイグイと伝わってくる。
それは、決して大げさな演技ではなく、こぼれ落ちる「人を愛おしむ」表情や、人生を選び取る時の戸惑いや、許す時のはにかみ…。
それらが、言葉を超えたセリフとして観客に投げられる。

私が一番突き刺さったのは、ポールの涙目のウィンクだ。
ダウン症のマルコを引き取りたいと最初から思っていたルディ。
一方、ポールには「ルディのため」というフィルターがかかっていたはず。
その彼が、わずか30分の面会時にマルコに送った涙目のウィンク。

タイトルの「Any Day Now」=いつか。
ルディと出会うことで、ポールには、その「いつか」がこの時すでに訪れていて、マルコにも「いつか」を贈りたかったのだ。
最初の敗訴で諦めなかったのもポール。
マルコからルディや、ルディからポールへ、ポールからマルコへ…。
この「愛の連鎖」を信じさせてくれる、一瞬のウィンク。

世の中に、「いつか」が訪れますように。
そして、その「いつか」に私が気づけますように。

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チョコレートドーナツのポスター
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茅野 布美恵のプロフィール画像

茅野 布美恵Freak

地方誌の編集者。映画は、ノンジャンルで鑑賞。基本的には、劇場で愉しむ主義です。その作品を観ないとわからないレビューになる傾向あり。情けない男が出てくる映画や、青春ものが好物。マイケルホリック(Michaelholic=マイケルホール心酔者)にして、パトリック(デンプシー)教徒。

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