映画『テルマエ・ロマエII』レビュー

湯のような涙。

観たのがTOHOシネマズ六本木ヒルズ、最大のスクリーン7。これが意外に良かった。冒頭でせり上がるコロッセオ、ケイオニウス(北村一輝)が奮闘する北方パンノニアの大地、舞台の大きさと作りこみが、喧伝されている可笑しさと、思いのほか大きな物語のテーマを増幅する。そしてルシウス(阿部寛)と真実(上戸彩)がそぞろ歩く草津の温泉郷が素晴らしい。画面奥から手前に伸びてくる「湯畑」、川端のそこここに点在する露天風呂。風景の広さ深さは前作以上。観る側の心をも大きく開いてくれる。

剣闘士と相撲取りを掛け合わせるアイデアは悪くない。そしてルシウスのモノローグとカット割り「顔が」…「平たい」の「間」が絶妙。ここで間違うと滑る。バカを大真面目でやる心意気には感心しっぱなし。そして出てくる主だった相撲取りたちが、場所を務める本物たちなのも驚きだ。日本相撲協会、やればできる!

そして躍動する肉体。ルシウス=阿部寛はもちろんのこと、ケイオニウス=北村一輝、数多くの関取たち。露天で和む真実=上戸彩の背中はまるで菩薩。嘘の無い肉体がもたらす鷹揚さが、映画に生命感を宿している。

前作同様に登場するオペラのソリストにも物語があってほっこりする。そしてオペラの選曲がクライマックスに近づくにつれて「ハマり出す」のだ。ズレが生む可笑しさより、せり上がる壮大さが勝ってゆく。

物語のクライマックス「恵みの湯」は侠気に、「別れの海」は愛情に満ちている。笑いに人間賛歌を込める姿勢にブレがないからこそ、胸迫るシーンが生きている。この2シーンでうかつにも温かい涙が溢れてしまった。健やかな観後感。

世の些事に疲れた方々には、エンタメでありながら小難しい正義に悩む蜘蛛男大作よりもこちらの「SF(すごい風呂)超大作」をお薦めする。観た後に風呂につかれば、少しは疲れも軽くなる。

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テルマエ・ロマエIIのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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