映画『ホビット 竜に奪われた王国』レビュー

スマウグ登場

急遽2部作から3部作へと割増された“ホビットシリーズ”第2弾。さすがなもので水増しの不安を物ともせず、3部作以外の語り口が見当たらない堂々たる3時間に仕上げている。ひたすら逃げ回った前作とは違い、タルを使った急流下りや、レゴラスを加えてのアクロバティックなバトル、そして邪竜スマウグと戦う怪獣映画の趣といった具合にアクションもバリエーション豊富だ。

もっとも、これでもまだ人物紹介のイントロダクションに過ぎず、ドラマの大きなうねりに乏しいのが惜しまれる。ルーク・エバンスが風格タップリに演じる弓の達人バルドも、エヴァンジェリン・リリーが驚くほど凛々しく魅力的に演じたエルフのタウリエルも見せ場は全て第3部だ。
キャリアの落ち目にあったオーランド・ブルームは大幅な脚色で出番を得ており、狭量なレゴラスがいかに王子としての見識を身につけていくのかその伏線が伺い知れる所に注目したい。

こういった後の指輪3部作への目配せは随所にされており、ピーター・ジャクソンがこれを6部作として完結させようとしているのはもちろん、ビルボの物語としても語り直そうとしているのは指輪の存在感からも明らかだ。原作では魔法のアイテムに過ぎない指輪はサウロンを呼び寄せ、そのサウロンの目はスマウグの目とリンクする。スマウグが全ての災厄を司る死の神である事を意味付けていくのだ。

全能の神でありながら金銀財宝に固執するというスマウグの“クサさ”をベネディクト・カンバーバッジの演技をモーションキャプチャーする事で表現したPJはアイデア賞ものだ。ベネ様特有のアクセント、特有の表情を持つこのモンスターは唯一無比の個性で原作から羽ばたいた。この「ホビットの冒険」におけるスーパースターをマーティン・フリーマンは唸るほど巧みな演技で好アシストしている。

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ホビット 竜に奪われた王国のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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