映画『アデル、ブルーは熱い色』レビュー

青の衝撃

産毛が見えるほどに肉薄したカメラがヒロインのありのままを掬い上げる。
フランス映画とはかつてから人生そのものを探究してきた国だった。3時間という映画時間の中で愛が醸成し、人生の一部となっていく様が描かれる。執拗なまでにテイクを重ね、わずかに生まれる無意識の瞬間を使ったというアブディラティフ・ケシュシュ監督独自のメソッドが、主演アデル・エグザルコプロスから素の演技を引き出す事に成功した。映画を人生の1つと捉えるために役名すらアデルに変えたというこの手法がカンヌでパルムドールを授与したスピルバーグが何より惹かれた要素ではあるまいか。ハリウッドシステムには到底真似できない、映画と人生の国ならではの撮り方だ。

画面の中には必ず青色が配置されている。
アデルの運命の人、青い髪のエマと出会う予兆であり、やがてそれは衝撃となり、そして愛の残像へと変化する。演じるレア・セドゥは息が止まるくらいハンサムにエマを演じ、人生を変えてしまう恋の相手としてキラキラと輝いた。カメラが臆する事なく捉える息づかいと肌のぶつかる音に包まれた激しいセックスシーンは永遠かと思えるような甘美のエクスタシーをスクリーンに充満させる。セドゥが一過性のフレンチロリータではなく、度胸と卓越した演技力の持ち主である事を証明する終幕の別れは厳しく切ないものだが、甘い後味があり、人生には忘れられない恋が1つあるべきだと信じさせてくれるのだ(カメラの主観が常にアデルにあるため、セドゥがエグザルコプロスとは全く違う演技メソッドで動いている事がわかる)。今後、さらにワールドワイドな活躍をするフランスを代表する女優になっていく事だろう。

原題は“LA VIE D’ADELE CHAPITRES 1ET2”(=アデルの人生、チャプター1&2)。そして映画という名の人生は続いていく。

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アデル、ブルーは熱い色のポスター
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長内那由多のプロフィール画像

長内那由多

タマネギ畑が広がる北海道のド田舎で多感な思春期を過ごす。中学2年生で「恋人までのディスタンス」のジュリー・デルピーに恋をする⇒メインの更新は本館ブログへ移行しました。こちらでは劇場公開作についてたまにアップします。

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