映画『ダラス・バイヤーズクラブ』レビュー

テキサス魂。

薬害に挑むHIVポジティヴ。ロン(マシュー・マコノヘイ)は後悔に浸らず「生」を賭けて驀進する。闘病モノにありがちな「改心」など全くなく、彼はあくまで自分の「スジ」に拘って戦う。どの病に限らず大体の患者たちが医師や薬剤師の意見に諾々と従う。だからこの物語は、周囲がどうであれオレはこう生きるという「テキサス魂」あってこそ生まれたものなのだ。

そもそもテキサスという場所はめちゃくちゃ保守的で開拓時代気質。ゲイカルチャーなどクソ扱いの風土だ。テキサスの(少なくともHIVに対しては)蒙昧で排他的な空気の中、それに抗って生きる道を「開拓」するのもまた、ロンの「テキサス魂」。ここのツイストが効いている。

闇ルートの薬を求めてメキシコに向かう道中で慟哭するシーンは、彼の二度目の産声だ。その日暮らしのように見えて、図書館に通って研究をつづけ、国がどう言おうが未認可薬ビジネスまで仕切っていく姿が凄い。最初はレイヨン(ジャレッド・レト)がHIVの「先輩」だったのが、いつしかロンが「生き様」で追い越す。世を厭うか世に拘るか。ここの積み上げが丁寧だ。スーパーのシーンが素晴らしい。そしてレイヨンからロンに「リレー」されるシーンにはグッとくる。

マコノヘイは勿論、レトの熱演も熱く重い。弱さや「しょうがなさ」も抱えながらその時その時を素直に熱く生きることが現代どれだけ大変か。HIVに見舞われたからこそ、苦闘の中で見出される一抹の「自由」。既存の共同体から追われて外に出たからこそ、退路を断たれて前に行くしかない「自由」。国にさえも抗える力。やれることはどうにでも手を出す工夫と情熱。彼らの生き様は涙を誘わずにおれに問うてくる。生きてるか、と。

人生は映画よりドラマチックなのか。実話に基づいて作られた話が「ハッスル」「ウルフ」「ダラス」。いずれもオスカー狙いとな。フィクションもそろそろ頑張らねーと。

9
ダラス・バイヤーズクラブのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0
Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

映画『ダラス・バイヤーズクラブ』に対するDaisuke O-okaさんのレビューにコメントする

こんな作品もレビューされてます

新聞記者のポスター

【この国の民主主義は形だけでいいんだ】

 おもしろい! どれくらいおもしろかったか? 横のおじ...

パティ・ケイク$のポスター

ニュージャージーのラッパー NR

 ニュージャージー版、 サイタマのラッパー? ニュージ...