映画『ラッシュ プライドと友情』レビュー

You always drive me crazy.

タイヤの溝から吹き上がる水滴、垂れ込める暗雲、相手を縁石に詰めるコーナリング、吹き上がる炎、視界を防ぐ雨。そもそもレース映画は共有感覚を作るのが難しい。大抵は「車そのもの」に寄りすぎてしまうのだ。そこを一歩引き、共有できる「危険感覚」描写を架け橋にして、観る側を二人の死地に追い詰める。ホンと画は余剰なく鍛え上げられた、まさに映画自体が驀進する「モンスターマシン」。

ハントとニキに交互に訪れる挫折。ハントが快進撃を続ける間、ニキは病室で苦闘する。ドレーンの気管挿入は想像を絶する苦痛に肺を傷つけるリスクを伴う。けれどニキは「もう一度やれ」と求める。そしてハントの自責。互いが同じコース上にいなくても互いを背負って戦っている。最終戦、ハントはニキと同様に自分を死地に追い詰めようとしたのかもしれない。富士のスタートグリッドで交わしあう二人の目礼にはマジでシビれる。

「対決」と同時に「選択」の映画でもある。人間は完全ではない。宿敵は常に自分との合わせ鏡になり、自分の生き方を問うてくる。相手と自分をエンジンのピストンのように無限に往復する意識は圧力となって、排気音を越えた静寂の彼方に彼らを解き放つ。その先の「選択」は神々しいほど純粋で、対決があるからこそ生まれた止揚なのだ。

客観視点のように見せながら、ラストにニキの独白を持ってくる。これが「対決する運命」の重さを際立てる。対決が人生を変え、宿敵への渇望が人生をドライヴする。永遠に「望んでも得られない」宿敵の資質。憧れとリスペクト。それは同様に「望んでも得られない」夢や野望にもがく無数の人々の魂を普遍的に刺激する。単なる勝負話を越えて神話に仕上げたホンの強度に感嘆する。

久々にハンス・ジマーのサントラにも気持ちが上がる。吠えるバスドラムに啼きあがるギター。魂に何かを抱いて挑むときにハマる音楽。しばらくラン中の脳内音楽になりそうだ。

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ラッシュ プライドと友情のポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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