映画『さらば復讐の狼たちよ』レビュー

クォーターホースによるアクションだけで元は取れる大活劇

人馬一体の馬の疾走感が半端ない大活劇だ。開巻劈頭、麻雀の筒子(ピンズ)の覆面で顔を隠した盗賊団が、マカロニウエスタンを思わせる、鉄道馬車(白馬が引く鉄道の列車で、中国ではその発音“マーリエチュー”が“マルクス・レーニン主義”を連想させるらしく、見事に転覆するのだ!)を襲撃する場面だけで、ワクワクの頂点に達してしまった。そこに流れるのは豪壮なマーチからワルツへと変奏する美しい久石譲の音楽である。高鳴る音楽の合間に、黒澤明監督の『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』でも出色だった“馬の嘶き”が聞こえる。このクォーターホース(おそらく!)によるアクションだけで元がとれる。日本映画で、この水準には到底達し得まい!
チアン・ウェン(『紅いコーリャン』『鬼が来た!』の姜文)監督は、なんともコミカルな調子で、2時間を超えるドンパチ映画の中にさまざま政治的風刺を込めている。舞台は、1920年代の辛亥革命後の軍閥が割拠していた時代で、何でもアリな時代でもある。
チアン・ウェン演じる盗賊団の首領チャン(張牧之)、チョウ・ユンファ(『男たちの挽歌』『シャンハイ』の周潤發)演じる街を牛耳る悪徳地主ホアン(黄四郎)、ふたりの行司役になるグォ・ヨウ(『活きる』『運命の子』の葛優)演じる県知事になりすました詐欺師のマー(馬邦徳)による「鴻門の宴」は、丁々発止の三つどもえによるセリフの応酬がまるでスクリューボールコメディーのようにスピーディーに展開されてスリリングだ。この3人以外にも、カリーナ・ラウ(劉嘉玲)、フー・ジュン(胡軍)、監督の妻のチョウ・ユン(周韻)、監督の弟のチアン・ウー(姜武)など、日本でもおなじみな顔も多く、話の最後まで飽きさせない。

8
さらば復讐の狼たちよのポスター
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 2
サトウ ムツオのプロフィール画像

サトウ ムツオFreak

ライター/エディター/ムービーバフ(映画狂)。責任編集のムック『007 Complete Guide ジェームズ・ボンドはお好き?』(マガジンハウス刊、1,500円)が11月30日発売。好きな監督は、クリント・イーストウッド(神)、マーティン・スコセッシ(神)。

映画『さらば復讐の狼たちよ』に対するサトウ ムツオさんのレビューにコメントする

こんな作品もレビューされてます

ブレードランナー 2049のポスター

前日譚ショートムービーリンク

 前作のブレイドランナー2017~今作2049の間に起こったショー...

ハッピーフライトのポスター

内容に深みはないけれど...

 女優綾瀬はるかさんの魅力がぎっしり詰まった作品。内容に深...

オースティン・パワーズのポスター

くだらないけど楽しい映画

 くだらないけど楽しい映画。疲れたときや落ち込んだとき、笑...