映画『ザ・イースト』レビュー

「第一歩」に拍手。

荒唐無稽ではない。環境保護団体にスパイを送り込んだマクドナルド。「未来の食卓」「ファストフード・ネイション」「フード・インク」などは超巨大食品企業をやり玉に挙げる。一方で「ザ・コーヴ」では豊富なスポンサーに裏付けられた反捕鯨団体の攻撃が記憶に新しい。

冒頭からタイト。カット毎の画に求心力があり、日本映画にはあまり見られない「ついて来い」という迫力がにじむ。潜入したテロ組織での「最初の儀式」にはガツンと来る。架空とは思えない体温がある。監督と女優で数多くの自然保護団体に同行した成果が存分に出ている。

襲撃が「コンパクトで静か」なのは、題材が故にメジャースタジオに掬われなかったことを逆手に取ったか。簡単に行き過ぎな感じもする。また、組織のテロが、救うべき市井の「誰を救ったか」「誰を救えなかったか」が十分に描かれていない。その経験がサラを「あちら側」に引き寄せるなら納得いく。良くも悪くもサラの視点が身の丈で狭いままで「あちら側」に行くのがテロ構成員への人情ベースに見えてしまうのは惜しい。

しかしそれとは別に「テロの背後で誰が得をする?」という問いも湧く。本作では保安企業が多国籍企業にテロへの解決を提供する。ならば企業を倒すためにテロや国家を利用するもう一方の企業が出るかもしれない。そして物理的打撃だけがテロではない。騙し合いも寝返り合いもあるだろう。世界の重層を想像する契機が本作にはある。例えばシー・シェパードに資金を流して活動させ得をするのはどんな存在なのか?ということだ。観後のパンフは勉強になる。

モンタージュで終わるラストこそ、長編として観たくなる。文明社会にいる以上、誰もが矛盾の境界線で生きていて「お前はどうだ」と問われ続ける。それがドラマの土壌。スケールの小ささはあれ、まずはこの題材を形にした第一歩に拍手。やはり映画は「あり得べき未来」を描く使命も持っている。

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ザ・イーストのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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