映画『エンダーのゲーム』レビュー

残酷な神話。

「ゼロ・グラビティ」で描かれた無重力描写を軽くこなし、艦隊戦闘では指令室のモニターをスマホのようにピンチアップ。VFXが生理的な快感に結びついている。長大な原作を限界まで絞っていて、あっという間にクライマックスまで持って行かれるスピード感が心地いい。

ヱヴァやガンダムで描かれた、人類の未来を託されて戦わざるを得なくなった少年少女たちがガッツリ描かれる。思春期のこじらせなどに割く暇も無く、ただ生存のためにエンダー(エイサ・バターフィールド)は戦う。相手が上級生だろうがシミュレーターだろうが容赦ない。葛藤を生む鬱屈は綿密な思考に基づいていて、その思考は戦闘で開花する。子供達の感覚は時として暴走するが、それをも織り込み済みで大人達が利用する。

しかし子供達の「感覚」は遂に大人達の策謀を凌駕する。それに気づかぬ大人達と「感覚」を普遍的な言葉に出来ない子供達の間には広くて深い溝があり、掬われぬ未来はそこに失われる。WEB上で多くの若者たちが未来を呟く。大人達にその呟きは届かない。そんな現代の絶望がクライマックスで音を立ててハマる。

言葉も通じぬ異星生物を相手にするのは、アメリカがイスラムを、日本が中韓を相手にするのとなんら変わりない。戦うか逃げるか相手にしないかの選択しか現代社会は提示できてない。「通じ合えるかもしれない」という直感を次世代に託している。未来を描くSFの使命が誠実に果たされている。

測り知れない「感覚」を備える次世代が、気付かぬうちに旧世代を追い越す。二つの間に立っていて、うっすら予感しているおれたち現役世代だけがこの映画に描かれていない。気持ちイイほど残酷な危機感、置き去り感。だからこそエディプスの神話は現代まで生き残ったのか。この映画はもっと当たっていい。同調圧力の尻尾にしがみついたまま膠着しているアラフォー世代が、もっと沢山観ないといけない。

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エンダーのゲームのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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