映画『ヴィダル・サスーン』レビュー

先駆者とは、なんと魅力的な人物であることか。

世界の美容界の流れを変えた男、ヴィダル・サスーンの生前に、自らの人生を振り返る彼のインタビューを中心に構成されたドキュメンタリー映画。
映像はモノクロ中心に過去の写真やフッテージをふんだんに使い、彼の下で働いていた元スタッフや友人、元妻などのインタビューも豊富に使い、ヴィダル・サスーンという人物が歩んできた時代と彼が与えた影響を多面的に描いていて、なかなか面白かった。映像はモノクロ中心でスタイリッシュ。
ヴィダル・サスーンという名前、イギリス系の名前ではないので、ずっと彼は大陸の人だと勘違いしていたけど、ロンドンの下町生まれのユダヤ人とのことで、生粋のロンドン子であることにまずビックリ。そして、14才の時から働き始め、「下町アクセントの人間は雇わない」というメイフェアで働くために演劇コーチに話し方を学び、美しいクイーンズ・イングリッシュと人を説得する話術を身につけるなど、階級社会のイギリスに於いて、並大抵ではない努力をした結果の成功であること、本来は建築をやりたかったが、学がないため建築的な観点で髪を切った、という部分で、独創的な人というのは、そのフィールドを超越出来る人なのだ、というのに改めて感心したり。
にしても、自分の人生を語るサスーン氏のなんとチャーミングなことか。人間的魅力に溢れているからこそのカリスマなんだなあ、と改めて思う。
そして大層な健康オタクであることにもビックリ。あの年代の人で食事や運動に気を配るのはかなり異例なのでは。にしても、アメリカの70年代〜80年代のにわか健康ブームの裏には、サスーン一家の影響もあったのかも、と思ったり。彼らが70年代初めに出版した健康な生活についての本がきっかけだとしたら、彼は美容界に革命をもたらしただけでなく、アメリカ人のライフスタイルまでも変えてしまったことになる。恐るべし。

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ヴィダル・サスーンのポスター
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大串 京子のプロフィール画像

大串 京子

シアトルに本社があるゲッティイメージズという映画や映像や広告などの素材を提供する会社で何でも屋的な仕事をしています。

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