映画『幸せへのキセキ』レビュー

ぼくらのキャメロン・クロウが帰ってきた!

 ハッピーエンドを予見させる邦題はちょっと鼻白むが、観ているこちらに「喜び(Joy)の種」を蒔いてくれるのは間違いない。
 キャメロン・クロウと「プラダを着た悪魔」のアライン・プロッシュ・マッケンナによる脚本は一点も非の打ちどころもなく、まるでハリウッドのシナリオの教科書のようだ。物語の土台は、家を買ったら動物園が付いてきた、つまり動物園を買っちゃった(We Bought A Zoo)というプロットただ一点のみ。妻を亡くしたマット・デイモン演じる新園長には、思春期の息子がいて、幼い娘がいて、歓迎ムードの動物園飼育員たちが彼を家族的に守り立てている。この父と息子の関係が物語の葛藤部分を司り、「たった20秒だけの勇気」を伝授されることになる。絶滅危惧種の動物たちが登場する愉快な場面は、ハワード・ホークス監督の傑作「ハタリ」の楽しさを想起させる。だが、けっして動物が主役なのではなく、主役は人間だ。あのジョン・ウェインらは抜群のチームワークで動物狩りをしていたが、このオープンエアな動物園のチームはデイモン園長のこの指止まれのキャプテンシーでうまく持っている。まるで「インビクタス 負けざる者たち」のように。
 エル・ファニングを撮影する際のBGMはキャット・スティーヴンス「ドント・ビー・シャイ」だったようだが、クロウ監督はキャラに応じてテーマ音楽を設定し演出したという。劇中でボブ・ディランやアイズレー・ブラザースらの既製曲、シガー・ロスのヨンシーによるオリジナル音楽が舌を巻くスムースな仕上がりで、音楽が物語に共鳴している。
 ハンド・イン・ハンド──動物園への入場の描写だけで、この動物園の温かさが伝わってくる。動物たちの鳴き声に混じって入場者たちの歓声が聞こえてきそうだ。映画そのものをハグしたくなるような、ステキな映画である。ぼくらの大好きなキャメロン・クロウ監督が帰ってきた。

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幸せへのキセキのポスター
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サトウ ムツオのプロフィール画像

サトウ ムツオFreak

ライター/エディター/ムービーバフ(映画狂)。責任編集のムック『007 Complete Guide ジェームズ・ボンドはお好き?』(マガジンハウス刊、1,500円)が11月30日発売。好きな監督は、クリント・イーストウッド(神)、マーティン・スコセッシ(神)。

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