映画『終戦のエンペラー』レビュー

隠された「日本人」への問い。

インディ製作でもこれほどの歴史大作が仕上がる。奈良橋陽子氏の辣腕と奮闘には畏怖さえ覚える。「パシフィック・リム」「ウルヴァリン・SAMURAI」、日本が内向きになっている間に、海外が日本を日本人以上の仕事で映画にしている。既に日本は日本人だけが描ける聖域ではない。どの描写も徹底して詰める明確な意志。そして海外に積極的に絡む日本人ほど、国、歴史、文化とは何かを考え抜いている。

天皇に戦争責任があるか否か。調査するフェラーズ准将(マシュー・フォックス)が会う近衛(中村雅俊)関谷(夏八木勲)の証言からは白黒がつかず、木戸(伊武雅刀)は天皇が降伏を唱えた一幕を語る。浮き彫りになるるのは「空気に同調してしまう」日本人の特性だ。

敗戦直後の東京は、容易に3.11の被災地に重なってしまう。外部の現実から目を逸らさせ盲従を強いる「同調圧力」は、鹿島(西田敏行)が准将に語る「信奉」と結びつく。日本の同調圧力は世界にとって災厄の素ではないか。痛烈な問いがある。

恋愛パートは不要だという意見が多い。そうは思わない。愛すればこそ、相手の歴史や民族の特性を考え抜く意志につながる。サスペンスが足りないという意見もある。准将が直面する、曖昧さの中に真実を隠す日本人の「闇」自体がサスペンスだ。史実と違うという意見もある。ならば史実を読もう。史実を捉え、翻案された理由を読み解くことも、映画と歴史を託されたおれたちの仕事かもしれない。

マッカーサー(TLJ)の到着早々の会話は、映画のゴールとマッカーサーの野心を一発で表現する匠の技だ。

准将と語り合うほぼ全ての日本人キャストが、英語で台詞を言う以上に「英語で演技をしている」。丁寧で聞きやすく堂々たる響き。やれば出来る。やろう。それが日本人だ。

准将が高橋(羽田昌義)に謝るシーン。そしてラスト。互いの禍根を脇に置き歩みだす二人の姿が、胸に刺さる。

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終戦のエンペラーのポスター
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Daisuke O-okaのプロフィール画像

Daisuke O-okaFreak

某メディア企業で取材・出稿を伴うVTRディレクターをやってます。映画製作ビジネスの経験有り。そのうち何かやってやろうとユルく模索中。映画以外では、スノーボードや自転車ほかアウトドア全般、マンガに読書、クルマ、ねこ、これからの社会の動きなど、興味は全方位。よろしくです。

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